僕の夏

海月

夜空のクジラ

小学5年生の夏、僕はクジラを見た。

海でではなく、夜空に。

最初は幻覚だと思った。

でも確かに、そいつは大きなひれを持っており、その体に不釣り合いなほどの小さな目で僕をじっと見つめたのだ_____。

「き……。青木っ!」

「ふぁ!?」

「さっきから問3を答えろって言ってるだろう!」

しまった。今は算数の授業中だった。昨夜のことが忘れられなくて、ついボーッとしていた。

「えぇと……45?」

「36だ。もう座れ。」

「すいません……。」

授業が終わると同時に、待ってましたとばかりに友人である坂口京介が勢いよく僕の前の席に座ってきて、

「俺の勝ちィ!」

ずいぶんと誇らしげな顔だ。実は坂口とは勝負をしていて、1週間のうちに先生から怒られた回数が多かった方が少なかった方にアイスをおごるというものだ。2人そろって先生から怒られることが多いためこんな勝負をすることになった。僕は、ぼーっとしていることが多くて、坂口はいたずら好きなのだ。

今日は金曜日で僕がさっき怒られなければ引き分けになるところだったのに……。

坂口は、したり顔で

「今日の放課後にいつものやつな。」

と、ニヤッと笑う。いつものやつというのは僕たちが最近ハマっているアイスだ。

「はいはい。」

僕は適当に相槌を打つ。

教科書をランドセルにしまいながら、窓の外に目をやると入道雲がシャンプーみたいに、もくもくと広がっていた__。

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