第39話 スラビア、大華連邦解放作戦
スラビア共和国との境界領域に近い大華連邦の辺境星系群。その中にも多くの有人星系があるが、どの星系も中央からの民生物資の補給が
スラビア共和国では、これまで二つの列強国、大華連邦、皇国に対応するため第二方面軍をこの方面に展開していたが、二方面軍は先の皇国との会戦で大損害を被り、第二方面軍首脳部も粛清を含め
ここは、スラビア共和国第二方面軍司令部。方面軍司令官ミハイル・アントーノフ大将の執務室。部屋の装飾はスラビア風。要は金ぴかで飾り立てられた部屋である。
部屋の中にはアントーノフ大将のほか、第二方面軍参謀長アンナ・カリーニン中将の二名しかいない。両名とも新たにこの第二方面軍司令官および参謀長として任命されたもので、先日中央より派遣されたばかりである。
「それで?」
「はい、司令長官閣下。現在わが軍は中央からの増援を得た上、さらに補給物資も積みあがっています。そろそろなにがしかの実績を出しておいた方が、よろしいかと愚考します」
「続けたまえ」
「
「解放軍か、悪くないな。具体的に作戦を立ててくれたまえ。それと、われわれが大華連邦に対して積極的な作戦行動をとった場合の皇国の動きも考慮にいれておいてくれ」
「皇国の動きについては、もとよりかの国は拡張主義的な傾向は少なかったうえ、クーデター政権を倒した後の国内整理にある程度の時間がかかるものと分析しています」
「なるほど、皇国については将来的には何とかする必要があるのだろうが、君の言う通り当面おいておくとするか。それでは、作戦案を頼む」
「かしこまりました」
先のスラビア・皇国間の会戦において、スラビア側も多くの被害が出たことから、大華連邦の軍部では、スラビアからの連邦への圧力は当面弱まるものと予想していた。それに加え、スラビア第二方面軍の動静情報はある程度は手に入っているものの、通常なら容易に手に入ると思われる、同方面軍の戦力回復状況の情報を大華連邦側は掴んでいなかった。
そのため大華連邦の政府および軍部では、国内の不満のはけ口を求める形で、クーデター騒ぎで政情不安が続いていると
大華連邦にとって、皇国へ侵攻するにあたり一番の懸念は、4隻の大型攻撃機母艦を擁する皇国の第3艦隊の動向だが、その第3艦隊は現在スラビア連邦との境界星域に進出しているものとの情報を得ており、出血を続けながらも、ついにガトウ星系に建設中の人工惑星基地の機能が8割がた完成したガトウ星系に艦隊を進出させることにした。
大華連邦宇宙軍の分析担当部署では、前回皇国への侵攻時、連邦宇宙軍第3艦隊が全滅した原因の究明を続けていた。
しかし、戦闘時、宇宙軍第3艦隊の発した超空間通信の量が極めて少ないうえ、その内容も『短距離ジャンプを繰り返す謎の艦隊』、『一発の砲弾で爆沈』『敵は艦隊ではなく単艦』など意味不明な通信であったため、原因の究明は継続はしていたのだが遅々として進んでいなかった。
そうこうしているうちに国内において輸送船団への襲撃事件が多発し、『一発の砲弾での爆沈』はないものの『異常に高いの命中率の小口径砲弾』『短距離ジャンプを繰り返す謎の小艦隊』の存在が確認されたため、『第3艦隊全滅』問題は先送りされ、『謎の小艦隊』への対応に追われるようになってしまった。
『謎の小艦隊』への対応は、その動向が全くつかめないため、輸送船団規模を大きくし、エスコート艦のローテーションに余裕を持たせるオーソドックスな案が採用され実行されたのだが、艦隊内での輸送船、エスコート艦の被害率は減少したものの被害総トン数は横ばいだった。
しかし、『謎の小艦隊』の各艦は小口径砲のみの装備であると考えられるため、虎の子の主力艦への直接の脅威ではないと判断している。
結局、大華連邦宇宙軍の分析担当部署は『謎の艦隊』に対する有効な方策を打ち出せないでいるうちに、ガトウ星系に建造した人口惑星基地へ『多少の被害が出るにせよ』十分『謎の艦隊』を撃破可能な戦力ということで、大華連邦の無傷かつ全残存主力艦の集中する第1艦隊が派遣されることが最終決定された。
ガトウ星系に進出した大華連邦第1艦隊の内訳は、
戦艦×4
重巡洋艦×8
軽巡洋艦×12
駆逐艦×48
+各種補給艦など
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