第28話 玉の保護
話は前後する。
皇都、クーデター
皇宮警備隊本部に超空間通信が入った。皇宮警備隊本部はいずれの組織にも属さない独立機関であり、警備隊員は世襲を基本としており、皇室に絶対の忠誠を誓っている。
受け取った通信では、
『玉の安全を図るため速やかな移動準備を願う。2時間後に玉の脱出用連絡艇を皇宮内発着場に降下させる』
とあった。
署名は、村田侯爵のものに間違いなかった。添付されたファイルには、航宙軍によるクーデター計画について詳細が示されており、航宙軍本部に操られた皇都防衛艦隊が皇都惑星を封鎖するため、クーデターの阻止はもはや不可能であると述べられていた。
この情報の真偽のほどは分からないが、警備隊本部では確かに近隣の航宙軍本部周辺の様子がここ数日張りつめて普段と異なることには気づいていた。警備隊司令官は、救国の英雄と言われている村田侯爵に賭けることにし、玉体にその旨を告げた。
そして、二時間後の指定時刻に降下して来た連絡艇に皇王とその家族全員を乗せることが出来た。
連絡艇は、皇都防衛軍
皇都惑星出雲の監視網をすり抜けた連絡艇が惑星の天頂方向の指定された宙域、超空間ジャンプが惑星および周辺人工物に影響を与えないぎりぎりの距離に指定された宙域に到着後、5分ほどでTUKUBAが指定宙域近傍にジャンプアウトした。
連絡艇はそのままTUKUBA内の連絡艇専用デッキに収容された。
TUKUBAは、連絡艇を収容後、間を置かず竜宮星系にジャンプし帰還を果たした。
一連の超空間ジャンプについては、当然星系内の広域探査システムで捉えられていたが、こちらも例のごとく記録される端から無難なデータに差し替えられていった。
TUKUBAは竜宮星系帰還後、すみやかに人工惑星URASIMAに向かった。TUKUBAの艦内と比べ、連絡艇内部の方が格段に居住性がすぐれているため、皇王ご一家には、そのまま連絡艇内に留まっていただいている。
皇王ご一家を乗せた連絡艇はTUKUBAより発艦して先にURASIMAの連絡艇デッキに到着しており、皇王ご一家を保護した陸戦隊員によって快適なシリンダー内のホールに移動していただいている。
「それじゃあ、われわれも、急いで皇王陛下にご
「艦長は侯爵閣下だからいいけど、わたしなんかが皇王さまにお目通り?していいんですか?」
「あたりまえだろう。吉田中尉はれっきとしたうちのうちの幹部だろう。しかも吉田伯爵家のご令嬢じゃないか。しっかりしろ。ここからのおまえの立ち回り次第では、おまえが吉田家を継ぐ可能性もあるんだからな」
「家は兄が継ぐことが決まってますから大丈夫です。でも分かりました。頑張ります」
「山田少佐もな」
「了解しました」
宇宙港のホール内にある特別室で寛いでおられたのは、皇王ご夫婦と、皇太子殿下、皇女殿下の四名と侍女二名だ。
俺たちは三人とも航宙軍を示すワッペンを取り外した艦内用戦闘服を着たままだったが、艦内用戦闘服もれっきとした制服ではあるし、着替えに時間を取るよりこのままの方よいと判断して、戦闘服のまま陛下に拝謁することにした。
「陛下、ご無沙汰しておりました」
頷く陛下。
「とりあえずのお部屋をここURASIMAに用意しておりますので
「村田、よろしく頼む。
そして、そちは、吉田の娘であったの、大きくなったものだ。村田を支えてやってくれ。
そして、そちが、山田だったか。一度
「はは」「はい」「はい」
ここから先は、この日のために皇都から呼び寄せていたうちの使用人にまかせ、皇王一行を用意したスイートにお連れした。
皇王陛下に先ほどお伝えしたように、大きくはないが乙姫の開拓コロニー北に位置する丘の上に、現在新皇居を建設中だ。建屋の方はほぼ出来上がっているが、内装がやや遅れている。ほとんど全て、宇宙船での取り寄せになるため、竣工までにあと二週間はかかるという。この二週間、皇王はURASIMAにご滞在になるが、今回の工事の発注などもワンセブンが行ったものなので、この二週間の遅れも、ワンセブンの計算のうちのはずだ。空恐ろしくもある。
皇居の丘のふもとにはすでに中央研究所の出先研究所が一部出来上がっており、研究員も着任し、各々の実験・研究を始めている。この研究所は現在も工事中で出先研究所とは言っているが、最終的には、皇都惑星出雲の中央研究所が完全移転してくる予定である。また、今後皇国を運営するための官僚団が使う大型の庁舎も建設中だ。
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