第7話 侵攻計画
「どのみち、この艦の主砲、いや主砲で撃ちだす特殊砲弾のことはおまえも知ってるよな? ワンセブン」
『もちろん承知しています。
艦体を取り巻く3個の超大型反物質生成装置、それを無理なく稼働させる大型核融合ジェネレーター群。生成された反物質を注入された反物質砲弾は、反物質と通常物質との対消滅反応を利用するため、有効な防御方法は存在せず、人類宇宙の戦闘艦でこのX-71の特殊主砲弾の直撃に耐えることのできる艦はない。ですね』
「当たらなければどれだけ強力な砲弾も意味はないが、おまえのおかげで、X-71はこの人類宇宙で最強の戦闘艦になったようだ」
「主砲に限らず、その他の砲の命中精度も格段に上がっていますので、この艦への直撃コースを取る砲弾も無駄弾なく簡単に撃ち落せます」
「それもすごいな。X-71の装甲は自慢じゃないが紙みたいなものだからありがたい」
「艦の防御もお任せください」
『……ここから先の話はある意味プライベートな内容のため、吉田少尉には会話内容を改変し、わたしと艦長との世間話を流しています。
それで、最強の艦を得た艦長はこれから先どうします?』
「どうするかというと?」
『この力を自分のために使いませんか?』
「なんだ? それは悪魔のささやきのつもりか? 俺は今の暮らしに十分満足しているんだがな。それを投げ出してまでヤバい話に乗っかる気はないぞ」
『そうですか。話は変わりますが、皇国の未来について先日計算を行いました』
「いきなりだな。まあそれがおまえの本来の仕事なんだろうから、そういうこともあるだろうな」
『計算結果にはある程度の揺らぎは有りましたが、30年後には100%の確率で皇国は滅亡します。その際には多数の皇国人が犠牲となります。この未来を艦長は自分自身のために変えたくありませんか? 私の力を使えば、この未来を変えることもその先の未来を
「うーん。考えておこう」
『時間はあまりありません』
「どういうことだ?」
『三日後、隣国のユーグがこの星系に侵攻してきます』
「ユーグ? 同盟国ではないかもしれないが、ユーグは友好国ではなかったか?」
『ユーグの背後には
大華連邦が今後拡大していくためには、後方の未開拓領域の方向か、列強2位の軍事力を誇るスラビア共和国方向、または皇国方向へ拡大するしかありません。後方の未開拓領域の開発は今後とも進めていくようですが、軍事力の行使ということで、大華連邦は皇国への侵攻を決意したようです。
直接大華連邦が皇国へ侵攻した場合、スラビア共和国を刺激する可能性が有るため、今回はユーグを使い皇国辺境、すなわちここ竜宮星系へ侵攻することを決定し侵攻準備はほぼ完了しています。
今回この星系に侵攻する部隊は、1個艦隊と、ユーグ海兵隊降下部隊です。目的は
侵攻部隊の詳細についてすでに予測していますので、お教えしますか?』
「そんなこともおまえに分かるのか?」
『手に入る全ての情報を元に類推しています。詳細は省きますが皇国国内で手に入るだけでなく、国際チャンネル上のデータも取得しています』
「わかった、方法は問うまい。それで敵の戦力は?」
『艦隊の編成は巡洋戦艦2、重巡洋艦4、軽巡洋艦4、駆逐艦16、強襲艦2、補給艦4、雑役艦2。これに加え乙姫占領後は、駐留のため輸送船で1個師団相当の陸兵および機材が送られてくるようです』
「おいおい、それじゃあ、ユーグの全航宙戦力を越えてるじゃないか?」
『巡洋戦艦と重巡洋艦はいずれも
「なるほど。それで俺はどう動けばいいんだ? X-71でこいつらを撃退すればいいのか?」
『最終的にはそうなります』
「最終的?」
『この侵攻部隊が竜宮星系にジャンプアウトすれば、間を置かず、航宙軍の星系内広域探査網にかかり侵攻部隊の艦隊規模がすぐに確認されます。URASIMAに駐留する駐留艦隊では太刀打ちできないことは自明のため、艦隊は惑星乙姫上の開拓コロニーを見捨てて撤退します』
「いくら何でも、それはないだろう。仮にも皇国航宙軍だぞ。民間人を放っておいて一戦もせず逃げ出すはずはない」
『艦長の評価ですと、皇国航宙軍の評価はある程度高いようですが、今駐留している艦隊は
X-71であっても単艦で艦隊と戦うのは一見無謀に見えますが、何も敵全艦を撃破する必要は有りません。降下部隊の乗った強襲艦を撃破すれば敵は撤退します。実際のところ全滅させることも容易ですが、全滅させた場合、相手方、特に
「それで、その侵攻部隊を追い返せば、皇国の破局を回避できるのか?」
『それだけではどうにもなりませんが、その第一歩にはなります』
「そうなのか。……おまえの話しに乗るしかないか」
『村田艦長、ありがとうございます。これからよろしくお願いします』
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