銀河をこの手に!-試製事象蓋然性演算装置X-PC17-
山口遊子
勃興編
第1話 X-PC17、開発開始
[まえがき]
本作はいずれ削除すると思いますので、本作を加筆修正した『銀河をこの手に! 改 -試製事象蓋然性演算装置X-PC17-』https://kakuyomu.jp/works/16816700427625399167 をお読みくださるようお願いします。
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本作は娯楽を目的とした小説ですので、そういったものだとご理解していただければ幸いです。
本作の技術水準では、宇宙船は推進剤を後方に高速で撃ちだすことで推進し、重力制御、重力推進等の技術はありません。その代り、安定宙域と呼ばれるある条件を満たす宙域から同じく安定宙域への超空間ジャンプは可能です。攻撃兵器は実体弾と光線兵器が主流になっており、ミサイル系統の武器は費用対効果の影響で一般的ではありません。いわゆる不可視のバリアのような防御兵器は存在せず、実体弾と光線兵器に対して軍艦は鏡面装甲を施しています。
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観測されうるあらゆる事象を数値化し、その数値をもとに解析モデルを瞬時に構築、構築された無数のモデルを統合し世界の次の瞬間を確率空間として描く。そして微小時間が経過し確率の世界が現実の世界となった瞬間、新たにそこで得られた事象データでモデルを修正、再構成し、また新たな確率空間を定義していく。
理論的には観測点の数を十分に与え、演算速度が十分にあれば、高い精度である程度の
この未来予測の考え方を進めることによって、何らかの意味のある目標や目的の実現確率を高い水準で最大化させうる現実世界への干渉方法が見つけ出せるはずだ。
干渉方法が適切であれば現実世界への干渉コストを限りなく抑えたうえで、望まれる未来が手に入る。要は適切な蝶を選ぶことでそのバタフライ効果により望む未来を得ようという発想だ。
物理法則にのっとった物体の挙動はモデルそのものが単純であるためさらに簡単である。例えば操艦中の艦に対し砲弾を発射し、艦と砲弾の各々の未来位置を合致させること、いいかえれば艦に砲弾を命中させることも、砲の精度が正確に測定できるのならば簡単である。超精密射撃盤のでき上りである。
その夢のようなコンセプトの元、皇国中央研究所演算装置開発部において開発プロジェクトがスタートして4年。
これまでプロバビリティー・カルキュレーター
計画ではその16基目であるPC16で、最終要求性能を満たす
そのはずだったのだが。
ここは、その中央研究所内の所長室。
部屋の中には、中央研究所所長の中川明彦(なかがわあきひこ)と、演算装置開発部の部長兼PCプロジェクトリーダーの山田裕子(やまだゆうこ)二人だけだ。
山田は、今回の開発プロジェクトの失敗について、所長からなにか処分が
中川所長は、まだ若年の山田を演算装置開発部の部長に
本来なら
中川は所長机の後ろで立派な椅子に座り、目の前に直立して緊張している山田裕子を見ながら、
「こんど、航宙軍で実験艦を作ることになった。すでに艦体は完成し、
裕子は、予想していた処分とは異なる内容の話しだっため、改めて中川所長の話しに耳を傾けた。
いったん言葉を切った中川は、机の上に置いてあったすでに冷めてしまっている湯飲みの中の緑茶を口に含んでごくりと飲み干し、
「そこでだ、ここからは、君と私だけの雑談だと思って聞いてくれ」
ここで、中川所長は机の上の何かのスイッチを入れた。おそらく盗聴防止用の会話生成器のスイッチだろう。会話生成器は、もっともらしい雑談を各人の声音で発生させる装置でシームレスに先ほどの会話につながった会話を生成していく機能がある。
「はい、所長」
普段使われることの無い装置が起動したことで重要な密談であることを推測した裕子はゴクリとつばを飲み込んだ。
「そうかしこまるな。盗聴防止器は動かしたが、それほど大した話でもない。それでな、実験艦の中央演算装置にはPC-14を新たに開発したことにして、予算だけをいただこうと思っている」
裕子は今の所長の言葉を聞き、もう一度ゴクリとつばを飲み込んだ。
「その金で、
裕子は中川のX-PC17という言葉を聞き、頭をゆっくり下げた。
[あとがき]
本作のPCは本文にあるようにProbability Calculatorの頭文字からとっています。
また、XはExperimantalの頭文字からとっており、試作機、実験機とかの意味で使用しています。
ご存じの方はほとんどいらっしゃらないでしょうが、ワンセブンは大鉄人ワン〇ブンをリスペクトした名称です。しかしこのお話には巨大ロボットは登場しませんし、ワンエイトが今後出てくる予定も有りません。
登場人物名の山田裕子は(やまだゆうこ)です。遊子(ゆうし)ではありません。
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