第86話 包容力

 真っ赤に腫れ上がるガイファさんとクオさんの頬に、ポシル印のポーションを指先につけ塗り込むと数秒で赤みが消え、腫れ上がった頬は元に戻っていった。


「「「「「おお〜」」」」」


 2人の頬の痛みが消え、元に戻った事で感嘆の声があがる。


 先程まで拳大に腫れていた頬は、すっかりと元に戻りお互いの攻撃で受けた全身の痺れも嘘のように引いていく。


 赤月の護りの面々が興奮している間に…。


 槍術<Lv1>NEW

 回避<Lv4>→<Lv5>

 威圧<Lv2>→<Lv3>

 統率<Lv2>→<Lv3>

 連携<Lv2>→<Lv3>


 うん。イーグラから学んだ槍術と回避。それと戦闘終了後の音はこの3つかまぁ妥当なところかな。

 イーグラにも留めさしてないし、アーグラも実際倒してない。


 オリジナルスライム♯定着

【Name】ポシル

【age】0

【Lv】14→16

【HP】 1482/1682→1888/1888

【MP】 1265/1265→1425/1425

【力】 402→451

【体力】 311→346

【器用】 244→304

【知力】 215→241

【素早さ】223→252

【魔力】 271→299


 回避<Lv2>→<Lv3>心眼<Lv2>→<Lv3>


 こっちもまぁそんなもんだろうね。

 今回の戦闘ではほとんど補助的な役割だったし、経験値はほとんど赤月との頭割り出しね。


 ひとしきり今回の戦闘での成果を確認しながら、肩の上のポシルを愛でる。

「あ〜癒される」

『ありがとうござます。マスター。私も久々にマスターと共闘出来て嬉しかったですよ』


 そう言って触手を撫でている右手に絡ませ、左右に揺れるポシル。あぁなんて可愛い生き物なんだ。


 ・

 ・

 ・

 ・


「あの〜。タカヤくん?もうそろそろ僕らも落ち着いたんだけどね。いやね確かに興奮し過ぎて面倒臭かったと思うよ。うん。だけどね。


「「「「そろそろ無視しないで、相手して下さい!」」」」」


 おっといけない。

 考察は良いとして、ポシルを愛でてたらつい時間を忘れていたみたいだ。

 確かに「…!」「……!」みたいな音は聞こえていたけどね。


 あ〜ポシルさん?2人の時間をを邪魔されたのが嫌なのはわかるけど、あまり触腕で叩かないであげてね。無意識に鋭くなってシャウさん脂汗流してるしなんか涙流してるし。


 しょうがない。肩にポシル印のポーションを……。


「あ〜なんかすみません。皆さんが落ち着く迄って思ってたんですが、少し意識が離れてました」


「ポシルも許してあげてね。それにそれ以上強くしてたらシャウさんの肩取れちゃうよ」


『う…う〜。マスタ〜』


「ありがとうタカヤくん。肩の痛みは消えたよ。ポシルちゃんもごめんね邪魔しちゃって。いや僕らも大人気なく興奮し過ぎたし詮索し過ぎたよ。冒険者にとって情報は何よりも大切だとわかっていたのに。君から秘密を聞き出してしまって、それに貴重な秘薬までこんなに使わせてしまって」


「「「「「申し訳ない」」」」」


「いえ。大丈夫ですよこれから気を付けて頂ければ。それよりも馬車の方へ戻りましょうか。皆さんも心配されているみたいですし。今回の件僕が原因だったので謝らないといけませんし」


「そう…だな。戻ろうか」



「タカヤさ〜ん!」


 全てが終わり、落ち着きを取り戻した『赤月の護り』のメンバーと商隊に戻るとフィーネが駆け寄りダイブしてきた。


「タカヤさん タカヤさん!心配しました!凄い爆発音も。大きなリザードマンの槍を避けている時も!大丈夫ですか?お怪我ないですか?痛いところはないですか?」


 僕の頭を抱きかかえるように飛び込んできたフィーネが、矢継ぎ早に話し掛けるがそれどころではない。

 もう一度言うが、"僕の"頭を抱きかかえるようにダイブしてきたフィーネが……。


「@#!!%%&#」


「あっ あっタカヤさんどこでお話を……んっ! あっ!そこは!ちょっと 待って 下 さ い んっ」


 フィーネが勢いよく離れ、目の前を見ると顔を真っ赤に染め上げ、細かく息を吐き出し胸の前で腕をクロスした状態で身を震えさせ、羞恥にかられるフィーネがいた。


「あー。フィーネ?」


「ハァ ハァ……。」


「フィーネさん?」


「………。」


「……ありがとうございます」


「タカヤさん!」


「あっ!柔らかく気持ちよ「タカヤさん! 怒りますよ!」 ごめんなさい」


「やっぱりタカヤさんはエッチです!……でも今回も私がいけないと言うかなんというかタカヤさんならもう少し……」


 あれ?この流れ前もなかっただろうか。

 後半消え入りそうな声で呟きも聴覚が良いので聞こえてしまっているが、やっぱり言わない方がいいんだろうな。


「フィーネ心配掛けてごめんね。でも大丈夫だよ。僕もポシルも護衛が出来るくらいには強いからね。安心して」


 さて、フィーネが落ち着いた所でフェオンさんの所に向かわないとな。結構迷惑かけちゃったし。


『赤月の護り』の面々には今回巻き込んでしまった謝礼に金貨を5枚を受け取って貰った。


 本当はもっと出したのだが、逆にポーションの件で騒いでしまった謝罪と、ロックリザードの素材と魔石だけでも十分にプラスになると金貨5枚以上は受け取って貰えなかった。


 その後フェオンさんに、事の次第と今回は自分がターゲットになっており商隊全体に緊張と迷惑を掛けてしまった事を謝罪した。


 途中、3人組の道中執拗に絡んできたパーティが、此処ぞとばかりに失態だと賠償を求めて騒いできたがフェオンさんに窘められ、不承不承といった態度でその場を去っていった。


 今回の件は、自ら騒ぎを沈めた事。

 最も迷惑を掛けた『赤月の護り』に報酬を支払っていた事もあり、お咎めは無かった。


 今後の護衛でしっかり仕事をしてくれればとフェオンさんは笑って肩を叩いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る