第41話 ゴブリンだもの

「ポシルー。そっちに行ったよー」

 ワラワラと出てくるゴブリンの首を、一振りで搔き切る。


『マスターいっぱい出てきます。』

 ポシルも触腕を3本硬質化し、3体同時に倒していく。


 そう目下、ゴブリンの集落を急襲中でなのだ。


「ポシルー。ゴブリンナイトが出てきてるから、そっちをお願いね。僕はゴブリンメイジとゴブリンアーチャーを先に始末するから」


 《威圧》《気配遮断》


『はい。ゴブリンナイトもゴブリンモンクも私にはダメージ与えられませんから大丈夫です。それになんだか気分が高揚して、動きやすいです!』


 これは戦神アリーネ様の加護『戦神の期待』のおかげだな。


 威圧で群がるゴブリンの足並みを崩し、ポシルの援護を終えたら。

 すぐさま集落の高台にいるゴブリンメイジの下へ向かう。遠距離攻撃持ちは、先に叩いておかないと厄介だ。


 《気配遮断》を発動しゴブリン達の視界から消える。


「ギャー ギャギャギャー」

「ギャー ギャイ ギャッガ」

(探せー探すんだー)

(いない。いないぞ。どこ行った!)

 て感じかな。無理だよ低レベルのゴブリンじゃ見つけられない。


 気配を絶ったまま、ゴブリンメイジの懐に潜り込み、聖者のナイフで首を狩る。


【風太刀】


 そして腕を横に振るい、風の刃を木の上にいるゴブリンアーチャーに向かい飛ばす。


「ギャー」


 風属性の魔法ということもあり、あっという間に風の刃がゴブリンアーチャーの弓と共に、体を真っ二つにする。


 スピードと隠密性、そして殺傷力を求めた結果作られた新魔法【風太刀】は、透明な圧縮された風の刃が太刀の如く切れ味で対象を切断する。


 また風属性のため遠距離攻撃としても使え、込めるMPによって威力は変わり、100程込めれば、簡単にゴブリンの体を切断する威力となっている。


「うーんきりがないな」


 何故いきなりゴブリンの集落を急襲することになったのか。

 森の中を進んでいると。たまたまゴブリンの上位種であるゴブリンアーチャーがファングウルフを仕留め引きずっていた。


 その後、気配遮断をかけ、ゴブリンアーチャーを尾行したところ。

 ゴブリン達の集落を発見したのだ。


 やっぱり友好的な魔物っていないのかな。


 しばらく様子を見てから集落に向かった。

「集落に入ったら問答無用で襲われるとは。警戒というより、完全に獲物として襲われたから反撃して急襲した形になったけど、この集落には気配察知で見るだけでも200以上は居るんだよねっ」


 敵意剥き出しで、近付いてきたゴブリンシーフの腕を飛ばす。


 ここのゴブリン達は、あまりスキルは身につけていないようで、途中からノーマルなゴブリンは解析をするのをやめていた。


 ゴブリン達は数は多いが、戦闘経験は異常に少ないようだ。

 少数であれば自分の腕を磨く努力をするが、ここのように数にもの言わせて暴れるだけだと、いつになってもスキルは取得できない。

 経験値は寄生して取得し、レベルだけは上がったのだろう。


 このゴブリンシーフは、貴重な罠発見<Lv2>を持っていたが、やはりスキル持ちは少ない。


 仰向けに倒れたゴブリンシーフの胸に足を置き、押さえつけ胸にナイフを突き立て、とどめを刺す。


 《気配遮断》

 そしてすぐに気配を消し別のゴブリンメイジの下へ向かう。


  ゴブリンメイジ

【Name】ー

【age】4

【Lv】 14

【HP】 50/50

【MP】 30/70

【力】 20

【体力】 30

【器用】 70

【知力】 60

【素早さ】30

【魔力】 70


【スキル】

 ノーマルスキル

 火魔法<Lv2>


 長めの詠唱の後、ソフトボール大のファイヤーボールを2つ撃ち出してくる。

 どうやらこれが最大の攻撃のようだ。


 器用さは比較的高くターゲットに対し、だいたい近いところには着弾している。


「しかしゴブリンはゴブリンなんだよなー。仲間が群がりすぎて……」


「ギャー!」

「ギャー!」

「ギャヒッ」


 仲間に着弾している方が多いんだよ。なんだろうこの残念感。

 背中撃たれてギャーって言う度に、笑いそうになる。ゴブリンメイジのやっちまった顔がまたやばい。


ぷっ。ほんとやめて、お腹痛い。


「ギャー!」


 んで、また当てるって。反省0じゃん。


 数は減ってきたが、それでも煩わしさは変わらない。気配を消し、背後に回りナイフを首にたてる。


「ん?」

「ポシル!右に思いっきり飛べっ!」


 ズドンッ


 間一髪ポシルのすぐ近くに、炎の槍が突き刺さる。地面に突き刺さった炎の槍は、突き刺さった周囲を焦がし消失した。


「ファイヤーランスか!」

 すぐさま飛んできた方向に視線を向ける。


 ゴブリンシャーマン

【Name】ー

【age】6

【Lv】 19

【HP】 90/90

【MP】 280/340

【力】 50

【体力】 60

【器用】 120

【知力】 190

【素早さ】40

【魔力】 290


【スキル】

 ノーマルスキル

 火魔法<Lv3> 闇魔法<Lv4>


 ゴブリンシャーマン。

 ゴブリンメイジの闇属性の進化先か?

 それにしてもレベルもスキルレベルも充実している。


 完全な魔力遠距離特化だな。MPを60も込めてファイヤーランスを撃ってきたか。


「ポシル大丈夫?」


『ビックリしましたが大丈夫です!ちょっと熱かったですが。』

 話しながらでもポシルの触腕は、正確にゴブリンの喉元に突き刺さる。


 今は分裂して2体で6匹ずつゴブリンを倒している。

 もはや作業だ。


 そして、その間にゴブリンシャーマンは姿を消していた。


「気をつけてね。いつ飛んでくるかわからないから。常に魔力感知のスキルを発動しておく事」


 わかったね。と軽く頭を撫でる。

 いつものように体をプルっと震わせ了解の意が伝わる。そしてその瞬間。


『早速魔力を感知。後ろです!』


 ポシルが魔力を感知する。すぐさま回避行動をとり、視界の端に飛んできた魔法の直撃を避けた。

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