第33話 幸腹亭

 ポシルから貰った魔石を手のひらで転がしながら、解析を発動させる。


「解析」


 ー魔石 Cランクー

【スキル】

 威圧 8

 豪腕 6



 ー魔石 Dランクー

【スキル】

 統率 6

 連携 5


 あとは

 ー魔石 Fランクー

 が4個

 ー魔石 Gランクー

 が4個


 Fランクがフォレストウルフ、Gランクがゴブリンだろう。

 スキルの詳細がないのは、スキル持ちじゃなかったからか?


 試しにFランクを4つとも吸収したが、何かを吸収した感じはしなかった。


 まぁそういうこともあるかな。


 フォレストレッドベアは本来Dランク、フォレストウルフリーダーはEランクと小冊子に書いてあった。


 おそらくネームドになる事で格が上がったのだろう。

 得られるスキルのポイントも多い。

 爪術は覚えられないのだろうか。それに咆哮が威圧に変わっている。効果が似たものに変わったようだ。


「吸収」


 手の平からゆっくり、フォレストレッドベアの魔石が吸収されていく。赤みが強く、ゴブリンよりも一回り以上大きな魔石がサラサラと風に舞うように消えていった。


 ピロン!

【スキルー威圧ー取得 】

 威圧Lv1

 ※他者を圧倒する気を発する。Lvが離れているもの。ステータスの劣るものに強く威圧をかけると意識を失う、もしくは死に至る。最大LV10


 ピロン!

【スキルー豪腕ー取得 】

 豪腕Lv1

 ※腕を使ったステータスに補正、力が上昇する。

 腕の使用時に力に5%補正 Lv1につき5% 最大Lv10


 威圧は他者を圧倒する力。

 スイデンのおっさんが最初に向けてきたスキルだな。ってかかなり凶悪なスキルじゃないか。

 下手したら気を失ってたってことか!

 あのおっさんに威圧をいつかお返ししよう。


 豪腕は腕力補正だな。

 最大50%の補正か。かなり優秀なスキルだ。

 身体強化と合わせればさらに能力は上がるはずだ。


 さて次は、フォレストウルフリーダーだ。

 手の平にフォレストウルフの魔石よりも、少し大きく緑色が濃い魔石を乗せる。


「吸収」


 先程と同じように魔石は風に舞い消えていく。


 ピロン!

【スキルー統率ー取得 】

 統率Lv1

 ※配下を指揮する際、行動に補正。配下の士気が上昇。

 また声の通りが良くなる。

 統率の人数はlvに依存

 Lv1で5人まで その後Lv5までLv×10×(Lvー1)Lv9までLv×100×(Lvー1)

 最大Lv10 上限なし


 ピロン!

【スキルー連携ー取得 】

 連携Lv1

 ※パーティを組んだ場合、連携時力 器用 素早さ 魔力に補正

 Lv1につきステータス (パーティ人数+Lv)×2%上昇

 最大Lv10


 皮肉だな。

 仲間から裏切られた僕に、仲間が出来るほど強くなる力か。


 神様。

 僕は矛盾した事を願ったのですか?人は信用できない。

 だけど仲間が欲しい。だからテイム能力なんですか?


 教会へ行こう。

 今は神様の声が、聴きたい。


 一通りの確認は終わった。

 今日は、まずは起きたらギルドへ寄るように言われている。

 そうだ下にいって、コックスさんとラーダさんにお礼を言おう。あの人達がいなかったら僕の心は歪んでいた。人を恨んでいた。


 完全には信用できないが、なかにはラーダさん達みたいな人達がいる。そう根底にあるだけで僕はきっと、また少しでも人を信じる事が出来る。


「おはようございます」

 ポシルを肩に乗せ下に降りると、夕飯の仕込みの前の休憩を取っているコックスさんとラーダさんがテーブルに座っていた。


「昨日はありがとうございます。お陰で随分楽になりました」

 2人に向かい。頭を下げてお礼を口にする。


 頭にぽんっと重さがかかる。


「おう。何があったかは俺らは冒険者じゃねぇからよく分からねえ。だがなあんな顔もう見たくねぇ。何かあったら俺らを頼りな」


 そう言って頭に乗せた手を離す。


「はい!」


「よし!タカヤ。腹減ってるだろう?あんたなんかすぐ作っておくれ。夜のシチューとかすぐ出せるのあるだろ?」


「おう。タカヤそこに座んな。今すぐ出してやる。最高にうめえシチューをな」


 そう言うと、すぐにシチューと丸パンが出てきた。


「いただきます」

 いつものように手を合わせ、シチューをひとくち口に運ぶ。


「うまい!」

 やはりこれしか言葉が出ない。

 この前たべた野ウサギとも違う力強い野性的な味は牛肉の赤みを思わせる。それでいて口に入れ噛んだ瞬間確かな歯ごたえを残しつつ消えていく。

 間違いなく何かのモンスターの肉だろう。さすがはコックスさんだ。


 僕の顔をみて高らかに笑い話しかける。

「どうだそいつはミノタウルスの肉だ。ランクはCに近いDランクまぁ迷宮産の肉ってやつだな。今日の夜の目玉料理だ」

 うまいだろ?と満面の笑みを向ける。


 確かに小冊子でこのクイートの街の西側に迷宮がある事は聞いていた。ギルドランクがD以上で単独で入れるようになるため、まだあまり気にしていなかった。


「ミノタウルスってかなり高級なんじゃ……」


「そんなもん気にすんな!腹が満たされ幸せな気分になったか?」


「はい!」


「ならいい。早く食って今日も精一杯やってこい。そしてまたここに戻ってこい!」


 コックスさんの料理を一口一口しっかり味わい、お腹を満たしていく。パンで最後の最後までしっかり拭い。完食する。

「ご馳走さまでした」


 改めて2人にお礼を言い。宿を出る。


 まずは教会へ行こう。


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