第25話 成長?
『マスター?』
はっきりと頭に響く声。先程までのポシルのような辿々しい言葉使いではなく、幼くもしっかりと知性を感じる言葉使いだ。
しかしこの部屋には、2人きり。
「ポシル?」
『はい。ポシルです!マスターがいっぱい魔力をくれたから、成長して定着する事が出来ました!マスターとお話しできるのも、マスターの魔力で定着したおかげです!』
というかこの喋り方はもしかして
「ポシルって女の子?」
あんなにたどたどしかったポシルが、はっきり喋っている。
そしてその高めの声は、少し成長して元気な女の子って感じだ。
ちょっと前まで赤ちゃんみたいだったのに……。
といっても念話のイメージだけど。
それでも、まだまだ可愛い盛りだ。
『そうだよ。マスター!マスターの魔力を貰って定着したとき、雌として定着したの!』
性別あったのか。スライム。
しかも雌って……。
「ちなみに全属性以外の魔力を与えてたらどうなったの?」
『風属性ならグリーンに、火属性ならレッドスライムにというのは変わらないけど、無属性でオリジンスライムのまま定着して、ステータスだけ上がったかと思う!』
ピシッと触手を上げてポシルが説明する。
なるほど無属性は、あくまでも全ではなく無であって、さすがに定着には影響を及ぼさないのか。
「そっか。じゃあ全属性でよかったんだね。時空魔法と無属性魔法、取得してからで良かったよ」
『うん!全属性は、自然には発生はしないと思う。たぶんユニーク個体じゃないかな』
「なるほどね。話は変わるけど、分裂体はどんな感じなの?」
ポシルがオリジナルスライムに進化した事で、検証項目2も進化してしまった。
分裂の検討が、分裂体の検討になった。
おそらく分裂は2つや3つに分かれるだけだったのだろう。
力無いスライムが、敵対者に対し分裂体を残す事で本体が逃げる。まぁトカゲの尻尾切りって感じのスキルだったのか。
今になっては想像だけどね。
ポシルに質問をすると、ポシルの体が真ん中からパックリと分かれ始め、2体に分裂した。
『『はい』』
2体同時発声。全く同じタイミングでこれが分裂体だと、同じ内容の念話を飛ばしてくる。
「すごいな。どっちが本体なの?」
『うん。どちらも本体だけど、今は僕が主導権を持ってる!』
向かって右側のポシルが触手を上げて、話し始める。一人称が僕なのは、僕が僕って言うからか?女の子らしく私……いや僕っ娘も可愛いからいいか。
『マスター聞いてないっ!ちゃんと聞いて!』
「あっごめんごめん」
余計な事を考えている事を、説明しているポシルにバレてしまった。 わかった
どうやらLv1で2体まで、その後はLvの乗数ぶん分裂体を増す事ができ、それぞれが独立して行動できるようになるとの事で、司令塔として1体は主導権を保持しているそうだ。
100体に分裂したら能力も100分の1なのか確認したが、10分の1程度の低下で済むとのことで、主導権持ちがやられても、次の者に移行するだけで、影響は受けないとの事だった。
「いやいや。聞いてるだけでやばいイメージしか湧かないんだけど。つまりLv10で能力は10分の1のポシルが100体できるって事?」
『うん。だけど分裂体は4時間分裂したままだと消滅しちゃうから。あと戻しても出した時間の倍の時間クールタイムが存在するの。ずっと最大数が出せる訳でもないし、また戻さないで、分裂体が消滅した場合。能力がその分低下するデメリットもあるの。だからマスターのために一生懸命強くなれるように頑張るの!』
「うっうん。よろしくね。僕も負けないように頑張るよ」
ポシルのこの知識は、何処から得ているのか不思議に思いながらも、1体に戻ったポシルを撫でながら、相変わらずの癖になる感触を楽しむ。
ポシルもまんざらではないようで、プルプルと軽く体を揺らしていた。
「そういえば、どこまで大きくなれるの?」
『今はそこまで大きくなれないの。これから色々吸収して成長すれば、どんどん大きくなるよ。いつもは、時空魔法が体内に掛かってるから圧縮して自分の体を収納してるの。邪魔だからね。食べ物とかは時空庫に保存してあるのから大丈夫。必要に応じて時空庫から取り出すから』
スキルには出ていないが、オリジナルスライムの固有能力だろうか。体内の時空庫とは、僕と同じ収納BOXのようなものなのだろう。
「そっか便利な能力だね。普段は小さくなって透明化かけていれば、自由に街を歩けるね」
そういうと、嬉しそうにベッドのうえで跳ねて、喜びの感情を飛ばしてきた。こういう所は変わらない。
ここまでで、大方の検証は終了かな。
ポシルの能力も、その可能性もわかった。今後どう活かすかは僕次第ってことかな。
「ポシルは睡眠が必要なの?」
『ううん。マスターの魔力でも回復出来るし、体内の分裂体と交互に睡眠を取っているから大丈夫。だけど分裂体の子全員が極限まで酷使されると休眠状態になっちゃう』
なるほど、まあその予定はないけど、ポシルの分裂体を酷使しないように気をつけないとな。
「そっか。じゃあ僕が普段宿で寝るときは、訓練の一環で出る魔力は、ポシルが吸収していいからね。それと寝る際に僕の余剰魔力を常に吸収してもいいよ」
『やったー!』
嬉しいのか、全体から触手が飛び出しウニのようになる。
僕の魔力を非常に気に入っているポシルなだけに、この提案は高級料理が毎日食べられるいったイメージなのか、しばらくベッドで小躍りを続け全身で喜びをアピールしていた。
そしてそんなポシルが、思い出したように2本の触手をだした。
『マスター。薬草と毒草は余っていないですか?吸収していい?』
「ん?あるよ。どっちも10束くらいだけど。どうぞ」
遠慮するように確認するポシルに、薬草と毒草を差し出すと、触手がさらに伸びてきて、草をそのまま体内へと運んだ。
すると触手の先が緑にひかり、隅に置いてある《狐屋》セットの中からコップを取り出し、何やら液体を入れ始めた。
※HPローポーション
薬草と水そして毒草より作られたポーション。飲むもしくは、素肌部分にかける事でHPの15%回復する。
ポシルの触手からコップ一杯分のHPローポーションが滴り落ちる。
解析結果もしっかりポーションとして認知されており、店売りのHPローポーションがHP回復10%なので店売りよりも効果が高い。
「なるほどね。これが《薬生成》かすごいね!」
『うん。今は薬草と毒草だけだけど、色々吸収できれば作れる薬も増えてくるの。今回は通常のポーションに毒成分を少し入れる事で、逆に効果を上げてるの。スキルのおかげで薬の知識が得られているんだよ』
なるほどスキルが知識を……。じゃあスキルが増える度に知識も増えるのか?
ポシル万能説はどこまでいくのだろうか。
とりあえず道すがら、植物を吸収してもらおう。
これでスキルの検証も終わりかね。
あとは明日移行実践で試していこう。
「じゃあ寝るね。おやすみポシル」
『はい。マスターおやすみなさい』
ドンドンドンドンッ
今日は、まだまだ終わらないようだ。
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