第8話 準備も大切です

 6つ鐘の音とともに、目を覚ます。


 今日の目標は、防具の購入と生活や冒険に使える道具の購入。

 時間があれば、ギルドの資料室で魔法の事を調べよう。


 朝一で行って薬草のクエストを確認してもいいな。薬草は手持ちのが、いっぱいあるし。


 食事を取る為着替えを済ませ、食堂に向かう。

 そういえば昨日から他のお客さんとは会わないが、他のお客さんは居るのだろうか。


「おはようございます」

 2人に挨拶をし、ラーダに鍵を見せる。


「おはようタカヤ。よく眠れたかい?さぁ座んな」


「おっタカヤか。おはよう!いっぱい食ってけよ。冒険者は体が基本だからな!」


「はい。いただきます」


 朝から2人は元気のようだ。

 席に座るとすぐに朝食が用意された。今日の朝食はゆで卵にベーコンと葉物のサンドイッチとスープだ。

 他に、普通の丸パンはお代わり自由、2個迄持ち出しOKという事でお昼用に頂こうと考えながら、サンドイッチを頬張る。


「うまい」


 ふんわりとしたパン。

 そして中の野菜は、たった今収穫したかと思うほどみずみずしく、シャキッという葉音と濃厚な大地の香り。ベーコンはしっかり塩気が利き一口食べると、飲み込む前に次の一口を欲している。


 夕食に続きパンもスープもうまい。紹介してくれた門兵のギランさんに心の中でだか、お礼を言っておこう。


(有難うございます!)


 今日にでも、ちゃんと直接お礼にいかなくちゃな。


「たくさんお食べ!何と言ってもここは《幸腹亭》食べて幸せにするのが信条さ!」


 女将さんに言われ、遠慮なくパンとスープをお代わりする。


 そしてコックスさんに悪いと思いながら解析をかけた。

 普人種

【Name】 コックス

【age】 48歳

【職業】 1.料理人


【スキル】

 ノーマルスキル

 料理<Lv8> 宮廷作法<Lv4>


【加護】

 豊穣神の好意(作物の鮮度維持・料理スキル経験値増加・中)


 天職や〜。

 この世界は適材適所が普通なのだろうか。上級者の域を超えて達人級、いや英雄の域に達している。

 この人、元々お城かなんかで料理を作っていたんじゃなかろうか……宮廷作法もあるし。


 それよりも《豊穣神の好意》か。

 加護ではなく好意。これは加護を与える程ではないが、気にしてますよって事だろうか?と言うことは寵愛など加護の上位もあるのだろうか。


 やっぱりラノス様以外にも、ちゃんと神様はいるんだね。


「ご馳走様でした!」


 お腹もいっぱいになり満足したところで、パンを2個貰いギルドに行く事を伝える。


「これからギルドに行ってきます。18鐘迄には戻る予定ですが、今日は生活や冒険の道具を買おうと思ってます。何処かお勧めはありませんか?」


「そうだね。それなら、ここの3軒隣の道具屋がおすすめだね。生活使いの道具や冒険の必需品を取り揃えてるよ。名前は《狐屋》さね」


「ありがとうございます。行ってきます!」


 まずはギルドに向かおう。クエストの確認と、いい防具屋を聞きたいしね。


 ギルドの扉を開け、受付前のホールを見渡すと、昨日以上の冒険者で溢れていた。


 大体4〜5人くらいのグループが多いだろうか、革鎧に身を包み剣を携えた人。金属鎧に身を包み大きな盾を背負っている人。軽量の装備に弓矢を肩にかけている人もいる。


 昨日は恐らくオフの時間帯だったのだろうか。これからクエストを受けて出て行く人々でごった返していた。


「これはあとで来た方がいいな」


 気を取直して道具屋に向かう。女将さんから紹介してもらった《狐屋》だ。


 名前的になんだか騙されそうで怖いが、まぁそんな店をラーダさんは紹介しないだろう、と考えながら店の暖簾をくぐる。


「いらっしゃーい」


 足を踏み入れた瞬間、正面に立った若い狐の獣人が挨拶をしてきた。


 どの獣人も顔自体は、THE動物顔。というわけではなく、どちらかというと人間に近い。


 獣人毎の特徴は耳の形、毛色、毛並み、そして尻尾の形が違う。この狐獣人さんも顔以外は普通の狐の特徴をしている。

 ただ眼は少し細く、狐独特の狡猾な雰囲気を感じさせる。


「あっあの。おはようございます。《幸腹亭》のラーダさんの紹介で、生活用品と冒険者用の道具を一通り見せて頂きたいのですが」


「あ〜ラーダさんの紹介かい。それじゃ勉強しなきゃね。私はここの道具屋の店長でキリスといいます。よろしくお願いします」


 丁寧に自己紹介をし、深々とお辞儀をする。物腰の優しい対応だ。


「はい。よろしくお願いします。昨日冒険者登録したばかりのタカヤです。生活と冒険用の道具は、揃いますか?」


 キリスは一度頭をさげ、すぐに店の奥へと入って行った。


 さすがは品揃えが良いと言われる道具屋だ。

 様々の道具が綺麗に並び、その下に値札が付いている。用途を想像しながら見慣れぬ道具を手に取りながら、店内を回る。


 半分程周ったところで、キリスから声がかかる。

「タカヤさん。道具の準備が出来ましたよ」


 キリスは店の1階の空きスペースに、次々と道具を積んでいく。


「まずは生活の道具でございます。左からタオル、歯ブラシ、コップ、ナイフセット、下着類一式。そして野外活動での道具として、火打棒、外套、水袋、魔石入れ、小テント、解体ナイフ、携帯食料でございます。外套は、特に野営時の寝袋として昼間の日差しよけ、もちろん防寒具としても必ず1着はお持ちください」


 手際よく揃えられた道具は、どれも必要なものとなっており、野営道具はギルドで貰った小冊子で確認した道具一式と同じであった。


 水袋は持っているが、セットと考えればダブっても困る物じゃない。ここは全部セットでいいかな。


「ありがとうございます。全部でいくらでしょうか」


「全てお買い上げで12点で銀貨12枚。ですが、ラーダさんから紹介として銀貨9枚まで勉強させていただきます」


「分かりました。ありがとうございます」


 そう言って、銀貨9枚をキリスに渡す。


「はい丁度頂きます。まいどありがとうございます。 またのご来店をお待ちしております」


 一通りの道具を購入し、店を後にする。


 一式が一つの店で揃ったことに満足し、途中見えないように道具一式をBOXに収納し、身軽になったところで改めてギルドに向かった。

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