第7話 確認は大事です

 足早にギルドを出て、テンプレ宜しくと絡まれることもなく無事ギルド登録出来たことにホッとしていた。


 さて、これからの予定はまずは宿を予約しよう。

 入街証は、明日依頼を受けるついででいいとして、夕飯まで小冊子でギルドのルールを確認して、それから夕飯にしようか。


 軽く頭の中で今後のスケジュールを立て、宿屋の場所を確認する。場所は今は、ギルドを背にしてるから左の角の2軒目を見てみる。


 そこには確かに《幸腹亭》と書かれた看板がかけられていた。


「すみませ〜ん」

 扉を開け、大きく宿内に響くように店員を呼んでみる。


「は〜い。いらっしゃーい」

 奥から熟年の女将さんらしい人がやってくる。恰幅の良いThe女将といった感じだ。


「こんにちは。門兵さんからの紹介で来ました。空いていれば泊めて頂きたいのですが」


「そうかいそうかい。わざわざ紹介するとは、ギランのやつだね?ありがとよ。部屋は空いてるからね」


「はい、ギランさんとおっしゃっていました。壮年の白髪混じりの髭を蓄えた兵士さんです。良かった。空いてるんですね。1泊おいくらでしょうか?」


「うん。間違いないね。ギランだね。お前さんギランとは知り合いかい?やつがここを紹介するなんてどういう風の吹きまわしかね〜」


 少し不思議そうな顔をしてこちらを少し観察してくる。


「まぁいいさね。宿泊は1泊銀貨4枚食事朝晩付き。どうすんだい?」


「じゃあ7泊分お願いします。銀貨28枚ですが、銀貨が無いので金貨1枚でいいでしょうか?」


「もちろんいいよ。それじゃあ銀貨72枚ね。あんた計算が早いね。どこかのボンボンかい?」


「いや。そんなんじゃ……」


「まぁいいけどね。じゃあ2階の右奥の部屋がそうだよ。食事は6つ鐘から9つ鐘が朝。 晩は18鐘から21鐘の間だけだよ。食堂で鍵を見せれば食べられるからね」


 そう言うと女将は鍵棚から21と書かれた鍵を出して、渡してくれた。

 その姿は大家族の肝っ玉母ちゃんのようでどこかほっとした。


「はい。ありがとうございます。では次の鐘くらいに降りてきます」


 先程、すでに15鐘がなっており、つぎのタイミングが18鐘であることは分かっていた。


 話をきくと6つ鐘は甲高い鐘の音。18鐘は低めの音だとのことだった。


 鐘は街の中央の時計台についており、建物の外からはどこからでも見える為、分からなければ直接確認する事もできる。


 部屋に入ると4畳半程のスペースにベッドとクローゼット、そして帽子をかけられるようなポールが置いてあるシンプルな作りの部屋だった。


「独り身にはちょうどいいスペースだな」


 やっと落ち着ける場所に着き、これからの事も含め考えようとしたが、疲れていたのか睡魔が襲い身を委ねるようにして眠ってしまった。


 コンコンッ


 ドアのノックする音で目を覚ます。

 どうやら熟睡していたようだ。眠気まなこをこすりながらドアの方を向くと、女将さんから声がかかった。


「寝ているのかい?そろそろ下に降りてこないと今日の分の食事を逃すよ!」


 慌てて窓の外の時計台を確認すると20時を回ったところだった。


「すみません。ありがとうございます!今降ります」


「そうかい。じゃあ食堂で待ってるよ」


 どうやら18時に降りると言ったが来ないことを心配して来てくれたようだ。本当に母親のような人だな。


「ほれ。今日の晩飯だ。たんとお食べ!」


 席に着くとすぐに晩ご飯がでてきた。今日のメニューは野うさぎのミートシチューにパンとサラダ。そしてパンはおかわり自由とのことだった。


これは嬉しい。


「頂きます」


 手を合わせはじめにミートシチューを口に運ぶ。

「おいしい……」


 素直に出てきた言葉だった。

 今まで食べたことがない美味しさだ。舌に乗せただけで溶ける肉。口に広がる深みのある香り、飲み込んだときに広がる確かな旨味。これは一級のレストランでも食べられるかどうかの逸品だ。


「そうだろ。うちの旦那の得意料理さ!そういえば自己紹介がまだだったね。私はここの女将のラーダ。そして厨房で料理を作っているのが主人のコックスだよ。よろしくだよ」


「あっはい。宜しくお願いします。僕はタカヤです。今日冒険者になりました。ちなみに18歳ですので子供じゃありません」


 口を拭きながら、女将と厨房の主人に頭を下げる。


「は〜っ、てっきり15ぐらいかと思ったよ。まあギランの紹介なんだ、変だけど変じゃない客ってのは分かってたけどねぇ」


 ラーダさんは、はっはっはと豪快に笑う。


「変だけど変じゃない客?どういう事でしょう?」


「ん〜あーそれはだね。門兵のギランってのは4つある門の門兵長なのさ。奴のスキルに《悪意感知》というスキルがあってね。まぁこの街に害を及ぼそうとしている奴がわかるのさ」


 それはなんて門兵必須の能力なんだろう。適材適所という言葉が非常に表現としてしっくりきている。


「まぁそんなんで、おそらく普通の平民には見えないから怪しい。だけども悪意はない。そんな評価の客をうちに紹介するのさ。ここはギルドに近いからね」


 意外にも怪しまれていた事実に、僕は軽く驚いていた。


 部屋に入りベッドに座り、寝る前にやろうと思っていた今後の行動について考える。


「まずは安定した生活だよな〜。あとはレベルをあげてそれなりに強くなる事。やっぱり仲間も欲しいよな〜」


 あれこれ考え、当面の優先順位を決める。

 1.冒険者に見られるよう動きやすい防具を買う

 2.生活に必要な道具を揃える

 3.魔法について調べる。

 4.ギルドのクエストをこなしてランクを上げる

 5.一緒にクエストを受けられる仲間を探す。

 6.レベルを上げてそれなりの強さを手に入れる。


「魔法……せっかく異世界に来たんだ。出来るなら使えるようになりたい。多分問題無く使えるはずだ」


 なんたって魔力重視のステータスだしね。


 優先順位を決め、明日からの予定が決まったところで、鞄から小冊子を取り出す。


 ギルドのルール以外にも、情報が載ってるって言ってたしな。

 少しでも情報を得るために、ギルドで貰った小冊子をランプの下で読み始めた。


「ふ〜」

 結構読み込んでしまった。


 内容はかなり充実しており、ギルドのルールだけではなく、採取依頼の多い植物の絵や採取方法。


 周辺の魔物の情報と解体の必要部位。


 この町の地図等が記載され、今後の冒険者活動に役立つものだった。


「うん。これは良いものを貰った」

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