第5話 街へ

 まずは、どちらから倒すか。

 幸い2体ともに喧嘩の真っ最中で、全く周囲を気にしていない。


 それなら。

 鞄から聖者の短剣を出し、右手に装備する。

 ー聖者の短剣ー

 ※神聖属性が付与された短剣、邪の者への与ダメージUP 実体のない者への攻撃可


 気配遮断で気配を消し、ゆっくりと剣士タイプのゴブに近づく。


 真後ろに回り込み。背後に付いた瞬間。

 素早く剣士タイプの首の後ろから喉を搔き切る。剣士ゴブリンは敵に気付く事なく息絶え、そのまま前に崩れ落ちた。

 

 そして、そのままの勢いで棍棒ゴブを袈裟斬りにする事もできたが、一度距離を空ける。


 ズシャ

 剣士タイプが倒れ、青い血溜まりを作る。


 一瞬棍棒ゴブが驚いた表情を見せるが、すぐに下品な笑みを浮かべて棍棒を上から振り下ろす。

 なるべく回避を意識して、紙一重でかわすように。

 ゴブの器用さの低さと、僕の速さがあればまず当たらないだろう。

 10分程かわし続けたところで

「ギャー…ギャー…ギャ」

 息も絶え絶えのゴブリンの攻撃も、そろそろ続かなくなっていた。


 ピロン!

【スキルー回避ーを取得 】

 回避Lv1※回避行動に補正。相手の攻撃の軌道をよみやすくなる。


 よし!思った通りスキルが手に入った。

 《学ぶ者》のおかげで意識して訓練したことになったようだ。

 一気に棍棒ゴブリンの懐に入り、剣を振り下ろす。ゴブリンは左肩から右の腹部まで深い切り傷を負い、そのまま前に倒れこみ命を散らした。

「初めて魔物の命を奪ったな。嫌悪感は……あまりないか」


 この2体は友好的な関係が築けないだろう。人型を殺した嫌悪感はあまりなかった。

 転移した事でこちらの世界に適応しているんだろうな。


 ピロン

 LvUP Lv1→2

 おっとレベルが上がったか、こちらも流石経験値UP。たった2体で上がるとは。さすがにLv3には届かずか。あと1体かな。


「さて、恒例の剥ぎ取りといこうか」


 まずはどこだろうか、2体を引きずっていくのもなんだし、いきなり収納BOXから出すのもあれだ。

 まずは、両耳と魔物にあると言われてる魔石だな。


「あっしまった!解体用のナイフがないや。まぁ聖者の短剣でいいか」


 ゴブリンを仰向けにし、耳を削いでいく。2体分の両耳をゴブリンからとった腰布に包んで鞄に入れる。この腰布メチャクチャ臭いが、何かに使えるかもしれないから回収回収。

 次に魔石だ、必ずあるらしいが何処に有るのかはわからない。


 まずは心臓付近から探ってみる。

 短剣を心臓付近から入れ、ある程度切り裂いたところで手を入れる。

 生温かい感触を多少我慢し、心臓の周りを手探りで探してみる。


 コツッ


 心臓の裏あたりに、何やら小石のような感触がある。そのままの摘んで外に出すと、薄い赤い色の小石だった。

 

 血の付いた汚れた魔石を、無限水袋の水で洗い流す。この水袋いくら水を出しても空にならない。まさに無限に水を出すことができる。


 ー無限水袋ー

 ※大気中から水分を吸収する事で、無限に水を生み出す。

 神様チートアイテムの一つだ。これを持っているだけで、水不足はまるで心配することが無くなる。

 水を生むのに魔力も必要とせず、傾ける事で無限に水を生む。まさにチートアイテムだ。


 ー魔石 ランクGー

 どうやらこれが魔石のようだ。ランクGか.……これが一番安いランクなんだろうな。


 魔石を洗うついでに、頭から水をかぶり、手や足をよく洗いゴブリンの血糊を落とす。


 これで取れるものは取ったはず。ほんとは燃やすとか有るんだろうけど。今火種もないしな。


「ゾンビになりませんように」


 よくわからないが、念のため手を合わせておく。アンデッドで復活。なんてパターンは遠慮したいものだ。


 よし。

 落ち着いたし、そこの木陰で休憩がてらステータス確認といきますか。


【Name】 タカヤ

【age】 18歳

【職業】 (1.無職(転移者) 2.自由人 )3.魔物使い

【Lv】 2

【HP】 30/30→50/50

【MP】 60/60

【力】 30→40

【体力】 20→30

【器用】 70

【知力】 70

【素早さ】60

【魔力】80



【スキル】

 ノーマルスキル

 剣術<Lv3> 気配察知<Lv4> 気配遮断<Lv2> 採取<Lv4> 回避<Lv1>

 モンスターテイム<Lv1>


【加護】

 創造神の加護(限界突破・神の御心・友好度UP・隠者)


 おっHPと体力あとは力か、何となくよく使った感のあるステータスが上昇しているかな。


 よしよし、このまま街を目指そう!


 程なくして、目の前に岩積みの城壁が見えてくる。

 3mくらいの高さで4つ角には物見台、正門には4人の兵士だろうか、武装した男性が見える。


 そして、その前には街へ入る為の列が2列。

 そして片方だけ伸びている。50人くらいだろうか、門の前で順番を待っている。もう一方は馬車や同じく武装した男女。

 こちらの装備は統一感がないので、恐らくこれが冒険者なのだろう。そして馬車は商人かな。


 ふと目に止まった門兵に解析を使用する。


【Name】ミレーク

【age】 28歳

【職業】 1.剣士

【Lv】 10

【HP】 70/70

【MP】 10/10

【力】 65

【体力】 60

【器用】 45

【知力】 45

【素早さ】55

【魔力】40



【スキル】

 ノーマルスキル

 剣術<Lv3> 危険察知<Lv1>


 一般的な兵士の平均が50くらいって話だと平均より少し上くらいかな。兵士らしく体力が多いね。


 次は列に並んでいる同じくらいの年齢の人は


【Name】 カント

【age】 25歳

【職業】 1.村人

【Lv】 2

【HP】 30/30

【MP】 10/10

【力】 30

【体力】 20

【器用】 30

【知力】 40

【素早さ】30

【魔力】10



【スキル】

 ーーー


 うん弱いな。

 でもLvが2ってことは魔物を倒した経験が少なからずあるんだろうか?

 冒険者はと……


【Name】 ゾック

【age】 32歳

【職業】 1.斧使い

【Lv】 22

【HP】 120/120

【MP】 10/10

【力】 90

【体力】 80

【器用】 40

【知力】 35

【素早さ】45

【魔力】10




【スキル】

 ノーマルスキル

 斧術<Lv3> 体術<Lv1> 悪食<Lv1>


 おおぅこちらの世界には脳筋が多いなぁ。Lv22は高いのだろうか。

 経験値がモンスター倒す以外に、どうやって入るかも分からないし、その辺の尺度が今一わからないんだよなぁ。

 

 まぁだいたいわかったし、一々解析するのも面倒だからよっぽどの人以外は解析かけなくて良さそうだな。

 そんな感じで色々と観察しているうちに、どうやら順番になったようだ。


 壮年の白髪混じりの髪に、髭がきれいに切り揃えてある。身長は180cm位だろうか。ぼくが175cmだから少し高いくらいかな。だけど後の3人に比べて威圧感がある。


「身分証の提示を 街へ来た目的は?」


 定型文のように問いかけられる質問に、同じ質問し続けるのも大変だな〜と見当違いな考えを頭に浮かべていた。


「おい 身分証提示だ」


 ぼ〜っとしているように見えたのか、門兵が再度問いかける。


「すみません。ど田舎の村から冒険者になる為にやってきました。身分証はありません」


「ん?冒険者は15からだぞ お前のように若い奴はもうちょっと経ってからくるんだな」


「へっ」

 思わず間抜けな声を出してしまった。

 他の事で何やかんや言われる事を覚悟してたけど、まさか年齢とは思わなかった。


「すみません。これでも18になりました。多分遅いくらいだと思います」


「ん?お前18なのか!いや〜すまんな。てっきり15歳未満かと。まぁいい。ギルド登録していないのであれば銀貨5枚だあるか?」


「はい。あります」


 鞄に手を入れ、銀貨5枚と浮かべると手の中に5枚の銀貨が収まる。そしてそれを門兵へと渡す。


「よし確かに銀貨5枚。これは入街証だ。ギルド登録をしたら戻ってくるといい。その時銀貨2枚を返却しよう。そして初めて魔物を倒す依頼を達成したら残りの3枚を返却する。ただし無理はせず地力をつけるんだぞ」


「ありがとうございます! それとすみません。冒険者ギルドはどこでしょうか?」


「あ〜そうかこの街は初めてだったか。ギルドは門を入ったら大通りをとにかく真っ直ぐ進めば着くぞ。剣と杖が交差し中央にエスナの花の看板が目印だ」


ありがたい。エスナの花は分からないが、行けばわかるだろう。


「ありがとうございます。早速行ってみます」

 ぺこりとお辞儀をし、街へ入る為進むと再度声をかけられる。


「お前さん泊まる所は決まっているのか?」


 そういえば迂闊にも考えていなかった。

「いえ、特に決めていませんでした」


「そうか、ならギルドを正面に右の通り角から2番目の宿屋がお薦めだ。名前は《幸腹亭》だぞ」


「《幸腹亭》ですね。色々ありがとうございます。行ってみます。あっ僕はタカヤと言います。よろしくお願いします」


「おう。俺はギランだよろしくな。頑張れよ」


 いや〜異世界初の街早々良い人に出会えた。

 今度ちゃんとお礼しに行かないとな。


 良き出会いに心を弾ませながら、期待感で高揚している自分を抑え、街へ繋がる門をくぐった。

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