転移先では望みのままに〜神族を助け異世界へ 従魔と歩む異世界生活〜
荘助
第1話・プロローグ
「お主はどんな生き方を望むのじゃ?」
目の前の真っ白な法衣を着たメチャクチャ高貴?な老人が問いかけている。
真っ白な部屋。
広いのか狭いのか。
その老人との距離感が全く掴めない、そんな空間……。
「お主はどんな生き方を望むのじゃ?」
再度かけられる同じ言葉。
ここに来る前までの記憶を辿る。どうしてこうなった?
名前は石神隆也 18歳 両親と姉1人の4人暮らし。ここまでは大丈夫。
記憶を辿り、一番新しい記憶を思い出す。カフェでホットコーヒーをひたすらお代わりをする事7時間。
得意な数学を後回しに、とにかく苦手な英語の詰め込み作業を行なっていた。
そろそろ夕飯の時間も近づき、小腹もすいてきたタイミングで一旦勉強に区切りをつけ、昼前からお世話になったカップを片付け店を出た。
そう、そこまではいつも通りの日常だった。違ったのはここからだ。
「キャー‼︎」
女性の甲高い悲鳴で振り返る。
「頼む。捕まえてくれ!誘拐だっ」
その光景に一瞬思考がフリーズする。
女性の押していたベビーカーから赤ん坊を奪って逃げる男女。赤ん坊を抱えた女性を守るように男が、大声をあげて道をあけさせている。
「どけー!どきやがれっ!」
何故か捕まえなくてはならない気がして、一歩男の前に出てしまった。
そう、この赤ん坊は、前の旦那が無理矢理自分の赤ん坊を奪おうとしているんだ。このまま奪われればきっと不幸になる。
強張る男の顔が近づき、道を塞ぐように手を広げる。そして男をそのまま捕まえる。
ドンッ!!
強い衝撃とともに袖を掴み、倒れ込んだ。
ここまでだった。この後の記憶はいくら思い出そうとしても出てこない。
気付いたら真っ白な空間の老人の前に座っていた。
「お主はどんな生き方を望むのじゃ?」
そう、ここでこの質問につながる。
僕はどうしたんだろう?あの赤ん坊は無事女の人のもとへ帰れたんだろうか。
「ほっほっほ 自分の心配よりも赤ん坊の心配かい。そろそろ質問に答えてもらえるかのぅ。といっても現状の把握ができていないようじゃな」
『どれ』
老人の指がひかり、頭の中に光が入ってくる。
「どうじゃ少しスッキリしたかの。さて現状確認じゃ、普通はここに来るまでに整理されているのだがの。まさか死んだことも気付いておらんかったとは」
死んだ?待て待て待て。死んだって言われたのか?僕は死んだ?
「そうじゃよ。お主石神隆也は、男と倒れ込んだ際頭を強打し、亡くなっておる。ちなみに男が捕まったことに動転した女が立ち止まった事で、女も周囲の人に捕まり、抱かれていた赤ん坊は無事母親の下に帰っておる。どうやら同僚の幸せの象徴である赤ん坊を奪うことで、絶望を味わわせたいという逆恨みが動機のようじゃの」
そっか〜。無事母親の下に戻れたんだ。よかった。
『まぁ動機は完全な妄想であったがの……』
っ!やめて。
あえて触れなかったのに。ん?頭の中に言葉が響いてる?ってか思ってることダダ漏れじゃないか⁈
『まあいってみれば神じゃからのう。それぐらいはどうってことないのう。結構前からお主の心の中の言葉と会話しとるがのう』
かみさま。神様!あ〜そうかそうだよね。こんな空間にいる人が一般人のはずないよね。
「それで、僕はどうしたらいいんですか?」
「なんじゃ随分切り替えが早いのう。うむまぁ良いか。そうじゃな、お主には違う世界に転移してもらう。所謂異世界じゃな。そなたらの世界で言うところのファンタジー世界じゃ。殺伐とした魔物が蔓延る生と死の隣り合わせの世界といったところじゃ」
「転移?転生。生まれ変わりではなく?」
「うむ。そうじゃ年齢そのままに転移してもらう。もちろん身体は向こうの世界に対応する身体に変化するがの。好きじゃろそういうの。お主の部屋の本棚にはそのような本だらけじゃし」
……っ!すきです。
じゃなくてなんでそんな事まで知ってんの!
「そりゃ神じゃからのう。まぁそんな事はよいのじゃ。これはわしら神からの謝罪と礼と受け取ってくれてよい」
「謝罪?礼?どういう事でしょうか。何故神であるあなたが謝罪されるのですか」
そんな疑問に老人は白い立派な髭を一度なでし、深妙な顔をして目を閉じた。
「それはの、お主が救った事になった赤ん坊が原因なんじゃよ。その子は御子。つまり神の一柱の子供が転生した者だったのじゃ。まさか、なんの因果か邪心に取り憑かれたものに拐かされるとは思わなんだ。そこでその子の親に当たる神が、本来禁忌とされている下界に対し力を行使したのじゃ。お主。助けに向かう際、極自然と身体が動かなかったか」
その問いかけに、あの出来事を思い出す。
確かにあの時何故かわからないが、助けなきゃならない変な使命感に支配されていた。
「たしかに。たしかにあの時自然と一歩前に身体が動きました」
「うむ。それが謝罪に繋がるのじゃ。本来、神がこのような事で、力を行使する事は禁じられているのじゃよ。そしてお主は死んでしまった。本当に申し訳ない」
深妙な顔のまま神様は言葉を続ける。
「そして、ここからが礼なのじゃが神がいくら力を行使しようとしても、禁忌を破ってまでの行動はそう簡単には出来んのだよ。前提条件として、まずその者が本当に助けたいと願っている事。そして実際行動に移そうとしている事。其の者の心根が善である事が条件となり、行使できる。力の行使といっても其の者の行動を後押しするといった感覚かのう。
だからこそ、あの時御子を助けるべく行動をとってくれた事に、そなたに感謝を述べたい」
はっきりと礼を述べる神様を前に僕はどういう反応を取れば良いか一瞬迷っていた。
「いえ、お礼なんて大丈夫です。子供が無事で本当に良かったです。
それよりも僕は元の世界にはもう戻れないんですよね」
その問いかけに
神様の眉間に少しシワが寄った気がした。
「すまぬ。本来、君は死ぬはずではなかったのじゃ。しかし神が関与したせいで未来が変わり最高の結果と最悪の結果を生み出してしまったのじゃ」
「そうですか、わかりました。異世界への転移よろしくおねがいします!」
気持ちを切り替え、本心から神様にお願いしてみたが、何故か神様の眼が見開いていた。
「お主は、先程からやけに潔いの。そう言ってくれると儂も嬉しいがの」
神様は好々爺のような笑顔を向け話を続ける。
「さて、お主が向かう先は儂らの管理する世界の一つスイゼンという世界じゃ。先程説明した通り、魔物や獣人、亜人と称されるものが生活しステータス、スキルが存在する。お主の世界の歴史的には中世ヨーロッパといった暮らしの世界となる」
さっきよりもより詳細な説明に、間違いなく心が沸き立っている。不安も大きいが何しろ憧れていたままの世界観。
獣人!亜人!すごい。ファンタジーだ!
「でもステータスにスキルという事ですが、具体的にはどのようなものなのでしょうか」
一瞬取り乱したが、たぶんセーフだろう。冷静を装い疑問点をぶつける。
「うむまあ簡単に説明するには見せるのが一番じゃろ。ほれ」
【Name】 石神隆也
【age】 18歳
【職業】 1.無職(転移者)
【Lv】 1
【HP】 ー/ー
【MP】 ー/ー
【力】 ー
【体力】 ー
【器用】 ー
【知力】 ー
【素早さ】ー
【魔力】 ー
【スキル】
ユニーク
異世界言語理解
収納BOX
……。
まさにゲームの世界観そのままの表示。スキルに異世界言語理解。そして収納BOX?所謂アイテムBOXのことだろうか。
「そうじゃよ。アイテムBOX、アイテムストレージまあ呼び名はなんでもよいがの。
さて、ここからが本番じゃ」
「お主はどんな生き方を望むのじゃ?」
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