第7章 インターンシップ 第11話

 四人は、目標とされる人材になるべく、いよいよ就職活動にも力を入れなければならない時期にきていた。


 各人には、それぞれの漠然としたサーパスハンターのイメージはあったが、それを具現化することができなければ、実践をともなわないのでは対策案の一つに終わってしまう。


 彼らが欲したのは、学んだ技術を実践できる現場だった。


 被害対策事業が発注されなければ現場の従事者の育成や確保はできないという意見があるが、現場で従事できるスキルを有した人材がいなければ被害対策事業そのものが成り立たないという意見もある。


 このような「卵が先か、鶏が先か。」という議論もあるが、明らかに卵である従事者が先になければ、鶏である事業が作られることはない。


 とはいえ、求人票を探したところで、「職能的捕獲従事者、サーパスハンター」などという募集があるはずもない。


 ワイルドライフマネージメント社も、残念ながら求人はしないとのことであり、坂爪のようにそのまま採用される可能性はなかった。


 坂爪の場合には、犬の訓練というスキルが今後の獣害対策に必要だと認識されたことが大きいだろう。さらには、射撃や現場での指導力かも知れない。


 武井はワナのスペシャリスト、三宮、鈴木は忍び猟のスペシャリストというプロフィールがある。


 そう考えると、四人にはまだまだこれというプロフィールがない。


 インターンからレジデントとして、一応の基礎課程までは修了することはできたが、ここからはフェローとしての専門性が求められるのだ。


 四人の中で、一番早く方向性を見いだしたのは、松山だった。


 彼は、入学前にニュージーランドでハンティングツアーガイドとしてワーホリを計画していたこともあって、その夢を再び実現しようと動き始めた。


 幸いなことに、ワイルドライフマネージメント社とニュージーランドのプロハンターとの間に仕事上のつながりがあり、せっかくなので商業的な狩猟を行うハンティングツアーガイドよりも、ニュージーランド政府の仕事を請け負うこともあるそのプロハンターのもとで研修を継続するという進路を早々と決めることができた。


 ワイルドライフマネージメント社とそのプロハンターは探索犬事業でのつながりがあり、松山はそこで犬の訓練についても専門的に学ぶこととなった。


 将来的には、坂爪と同じように犬の訓練ができるというスキルが大いに役立つことになるかも知れない。


 唯一、彼にとっての弱点は、英会話だ。そのため、夜は英会話を学ぶ毎日となった。

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