第7章 インターンシップ 第6話
月曜日、午後三時にワイルドライフマネージメント社の資材倉庫前に松山たちが行くと、今回指導者として同行する武井が待っていた。
「じゃ、任せたからね」と松山たちに言うと、彼らの作業を見守った。
松山の指揮で、必要な機材を車に積み込み終えた段階で、武井から声が掛かった。
「忘れ物は、ないかな」
「はい、大丈夫です」
と松山が答えた。
「本当に大丈夫?」
「はい・・・」
「一応、確認しようか。チェックリストは作ってある」
「いえ・・・。作っていません・・・」
「そうか、じゃ、うちが使っているチェックリストで代用しようか」
「すみません。よろしくお願いします」
「じゃぁ、はじめようか。箱ワナは積んだね」
「はい」
「箱ワナに装着する自動通報システム」
「はい」
「ワナに装着する標識」
「あっ!積んでいません。というか、作っていません」
積載する機材は、現場で必要なハードである。当然、箱ワナや自動通報システムは頭に入るどころか、忘れようのない機材だが、法律義務であるワナに装着する標識を積むのを忘れたという前に、作ることすら思いついていなかった。
これまでの現場では、すでに用意されていて、ワナに付ける作業は経験していたが、そのタグを誰かが事前に作っているという単純なことに目が向いていなかった。
これがなければ、箱ワナを設置できても、稼働させることはできない。
「チェックリストの作成や機材の事前確認は、当然やらなければいけないことだし、いつまでもお客さん気分ではダメだぞ」
「はい。すみません。直ぐに作ります」
とは言ったものの、その場で対応できるものではない。明日の出発までに、完成させなければならない。
四人は、早々に発覚した忘れ物に動揺していたが、武井はチェックリストを続けた。
他には漏れはなかったが、小さなワナに装着する標識ひとつで作業が止まってしまうという大きなミスは、四人に深く刻まれた。
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