第6章 実践 第20話
記事への反応もあって、学校には問い合わせの電話もあった。
批判的なものは全くなく、入学に関するものや、どんなカリキュラムなのか、講師はどんな人たちなのかというものが多かったようである。
狩猟者の育成とは異なっているということを記事で強調していたこともあって、狩猟者と何が違うのかという本質的な問い合わせもあった。さらに、行政からの問い合わせもあり、職員の見学や聴講ができないのかというものもあった。
狩猟免許の取得や銃砲の所持許可証の取得のために、専門学校に通う必要はない。
手続きは煩雑だが、仕事をしていても自宅での学習で十分取得は可能な資格である。ただし、その段階ではペーパーハンターだ。専門学校で学ぶ意味は、その上に積み上げる技術と知識であろう。
狩猟の現場で、数年の時間を掛けて学ぶことを短期間に集中的に学べることが最大のメリットであろう。さらに、ここでの教えは単なる狩猟ではなく、科学的な捕獲であり、そこに従事できる人材の育成なのだ。
記事からは、その違いが読みとれる。
それに気づいた人たちにしてみれば、柴山や後田や瀬名が感じたように、この学校に憧れずにはいられないのだ。ただ、自分の置かれている現状がその欲求を満たすことを許さないジレンマがある。
仕事を辞めて入学することは、難しいだろう。せめて短期講座や聴講ができればと思う気持ちは、十分にわかる。
そんな周囲の要求に応えられるかどうかも含め、パイオニアである学生達の今後に掛かっているのだろう。
そんな中で、ワイルドライフマネージメント社が自動通報システムを共同開発した警備会社の担当者が、短期研修ということでワイルドライフマネージメント社へ出向してきた。
その担当者との出会いは、彼らにとっても良い刺激になるとともに、柴山にとっては大きな出会いとなっていた。
警備会社には、多くのマンパワーが存在している。
家財を守るというセキュリティは、自分の畑の作物を守るというセキュリティを考えた場合には、これほど適合した企業形態はないだろう。
イノシシが畑に侵入したとか、サルの群れが畑に接近しているという情報を収集し、人を急行させて追い払うというスタイルは、通常の施設警備となんの変りもない。
さすがに捕獲となると、従来からの警備ノウハウだけでは対応しきれない。しかしながら、ここに教育と訓練が加われば、野生鳥獣との戦いにおいて重要な戦力となりうる可能性を秘めている。
捕獲業務に適する性格というものがあるかどうかは難しいが、危険を伴う現場で冷静に行動できるかどうかは、重要な要素となる。
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