第4章 練習 第10話
「向こう側にある一番射台とこの七番射台とを結ぶ線から左にはたとえ弾が装填していなくても銃口を向けないように気をつけて。まずは、前方にあるセンターポールに向かって銃を構えてみよう」
そう告げると、後田を射台に招き入れた。
指示どおりに後田が銃を構えると、その横から山里が「もう少し、銃口を高く。そう、その位置でまずはクレーを見てみよう」
というと、プーラーと呼ばれる操作員に、「マーク一枚お願いします。ハイ!」と声を掛けた。
すると後田の右横にある放出口からオレンジ色のクレーが白いセンターポール上を通過して反対側の金属ネットにぶつかって割れた。
「今のようにクレーが飛ぶから、弾を装填したら、コールして、銃身の先端の照星とクレーとが重なったら引き金を引けば命中するから。じゃ、後田君やってみようか」
「はい」と答えた後田の声は、若干緊張で震えていた。
「ハイ!」と後田がコールすると、さっきと同じようにオレンジ色のクレーが飛び出した。
バーン!という発射音とほぼ同時にクレーが大きく二つに割れた。命中だ!
「うん、いいね。ちょっと上を撃ったけれど、引き金を引く度胸がいいや」と山里が褒める。
「じゃ、あと四発撃ったら、松山君と交代して」
後田は、最後の五枚目を失敗したが、五発撃って四枚に命中させることができた。
次に射台に入った松山も、同じく最後の一枚を外して四枚。
柴山は、最初の一枚を外したが、あとの四枚には命中させることができて、三人とも最初の射台は同点だった。
最後に瀬名が撃ったが、見事に五枚すべてに命中させた。
次に、今度は同じ七番射台で、反対側のプールと呼ばれる高い位置にあるクレーの放出口から自分の方へ向かってくるクレーを撃つことになった。
「この場合、まず銃の待機位置は、センターポールとクレー放出口の中間地点で、クレーが近づいて来たら、照星とクレーの間に三十センチメートルの見越しをとって、スイングしながら撃ちます。
向かってくるだけに、体が起こされて胸をそるようなスイングになる人が多いです。しっかり、軸を意識したスイングが重要です」
ここでも後田が一番先に撃った。
三十センチメートルの見越しという感覚を覚えるのが狙いだろうが、クレーの速度とスイングの速度がなかなかシンクロしてくれない。
最初は、クレーのどこを撃ったのかもわからないくらいにテンパッテいて、山里から引き止まっていて後を撃っているといわれても、どうこがどうなっていたのかがわからなかったが、三発目で命中すると、四、五発目も命中させることができた。
松山、柴山も同じような状況で、松山が二枚、柴山も二枚の命中という結果だった。
瀬名は、ここでは一枚という結果で終わり、三人に負けたことを悔しがっていた。
わずかに十発しか撃っていないのに、四人とも額には汗をうっすらと浮かべている。教習射撃の時は、トラップで受講したために、このように向かってくるクレーを撃つことはなかっただけに、なかなか感触がつかめなかったが、トラップと違ってクレーとの距離が近いこともあり、命中して割れるときの迫力が全然ちがった。
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