第4章 練習 第11話

次に、一番射台に移動すると、今度はさっきとは逆でマークから放出されるクレーを右から左にスイングしながら撃つ練習となった。


「さっきとは逆のスイングとなるけれど、見越しの距離や気をつける点は同じだからやってみましょう」


 山里の説明を受けると、同じ順番で五発ずつ練習した。今回は、後田が三枚、松山が二枚、柴山が四枚、瀬名が三枚命中した。


 瀬名が一番射台からでると、大きく「ふ~」と息をはいた。


「緊張する・・・」


 そのつぶやきに松山も後田も柴山も共感していた。


「では、次は二番射台でマークを撃ちます。今度は、狙い目とクレーとの位置関係に一番射台や七番射台に比べるとわずかに角度がつくので、見越しの距離が長くなりますので、四十から七十センチメートルを一応の目安にして撃ってみてください」


 見越しの距離が変化するということは、どういうことだろうと疑問に思ったが、ここではまず撃って見ることだろうと後田は思って、射台に入った。


「ハイ!」というコールに続いてマークの放出口から飛び出したクレーにあわせてスイングを開始するが、素人目にみてもスイングが波打っているのがわかる。安定感がないのだ。


 バン!という発射音はしたが、クレーは割れずにネットにぶつかって砕けた。


「あれ~」という後田に対して、


「さっき言った見越しの距離は、あくまで目安であって、人によって感覚が異なるから、いろいろと試してみましょう。今のは、クレーを置き去りにして、だいぶ前に銃を向けておいて引き止まってその結果クレーの後ろを撃っているよ」


 あの一瞬のなかで、弾がクレーの後に行ったことがどうしてわかるのだろうか。後ろで見ていた三人には、どんなことが起こっているのかまったくわかっていなかった。


 二発目でもクレーは割れなかった。


「いろいろと撃つ場所を変えてみて」

 三、四、五発と結局、クレーが割れることがなかった。


 射台を出て、松山と代わった後田は大きくため息をつくと、「全然当たらなかった」と見たままの感想を吐いた。


「後田君は、引き止まりを起こしているので、弾はクレーの後ろに飛んでいるよ。最後までスイングし続ける意識をしっかりださないとだね」

という山里のアドバイスがあった。


 松山には、そのアドバイスが効いたのか、三枚に命中させることができたが、後田と瀬名は二枚だった。

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