第4章 練習 第4話

「それから柴山君は、ベレッタの上下二連でスポーティングタイプ(銃口部にある交換チョークを入れ替えることで、絞りを変更することができる銃)だね。チョークは両方ともスキートかな」


「はい。上下ともにスキートチョークをつけてきました」


「そう、そのほかにはどんなチョークがついていたのかな」


「えぇ~と」というと、柴山はケースからチョークの入った小箱を取り出して、山里に示した。


「シリンダー、インプシルンダー、モデ、インプモデ、フルね。すべて揃っているね」


「はい。でも、今日はスキートだろうと思って、両方ともスキートチョークです」


「了解。チョークの手入れが重要だから、射撃練習が終わったら教えるね」


「ありがとうございます」


「あのぅ。チョークって絞りのことですよね」と質問してきたのは、同じスポーティングタイプの上下二連を購入した瀬名だった。


「そうだよ」


「交換チョークってどんな時に交換すれば良いのかなって・・・」


「なるほど、良い質問だね。射撃場ならスキートをやるかトラップをやるかでチョークを交換するといい。スキートなら柴山君が選んだようにスキート・スキートが正解。


 トラップなら、上がフル、下がモデかインプモデっていう組み合わせにして使います。捕獲現場であれば、その見通しの良さや何を撃つのかなどの条件を考慮して組み合わせを考えるということかな」


「ありがとうございました」


「じゃ、僕のミロクの上下二連は下が平筒で上が二分一絞りっていうのは・・・」


「あぁ、平筒はスキートチョークのことで、二分一絞りっていうのはモデのこと」


「なるほど」


「言葉が複雑で覚えきれないよね。君たちが使っている銃は、瀬名さん以外はすべて十二番径だけれど、それがどうして十二番って呼ばれるかは勉強しましたか」


「はい。教習射撃の時に、一ポンドの鉛玉を十二分一にしてそれを丸めた大きさの銃と教わりました。二十番は二十分の一となるので、十二番より数字は大きくなるけれど銃口は細くなるって」


「正解。鳥撃ち銃として発明された散弾銃では、チョークの発明は特に画期的だったんだよ」


「そうなんですか」


「あぁ、それで、スキートチョークからインプシルンダー、モデ、インプモデ、フルと絞りが強くなって行くわけだ。


 後田君の銃は、後矢、すなわち二発目が出る上の筒がモデとなっているので、実猟銃ということになって、スキート射撃をする場合には若干散弾の広がりが狭くなるので不利だけれど、無理ではないから大丈夫」


「不利なんですか・・・」


 後田は、なんとなく情けなくなってしまった様子だった。


「大丈夫。きちんと狙う練習をすれば問題ないから、それにオリンピックを目指すならともかく、君たちが目指すのはサーパスハンターだろう」

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