第3章 入学 第38話

 試験を終えて、大きく息を吐いき、緊張を解いたのは柴山だった。


 すでに第1種銃猟免許を取得している、後田と松山と瀬名は一部の試験が免除されることもあって、試験範囲も狭く、覚えることもさほど多くないことから、事前学習でもどちらかと言えば柴山の先生役であり、柴山に教えながら、自分たちの知識を再確認しているような状況だった。


 そんな状況だったこともあって、柴山は「もし、これで俺が不合格なんてことになったら・・・」というプレッシャーがあった。


 予備講習の効果もあり、実技では全く問題はなかった。


 学科試験も後田らの協力で、問題なくクリアできたと思える。


 問題だったのは、「鳥獣の判別」だった。十六種類の鳥獣の図画を見せられて、法律で定められた狩猟鳥獣四十八種の中に入っていて獲って良いか悪いかを○×で判定し、○の場合には種名も記入するという試験であったが、カモの見分け方が事前学習の段階から最後まで苦戦していた。


 専門学校からの編入者である松山は、一、二年生の頃から、鳥獣に限らず、いろいろな種を見分ける力を身につけていて、事前の学習会では柴山と後田と瀬名への教師役だった。


 彼にとっては、慣れた分類作業なのだが、三人にとっては、なかなか覚えられないものばかりだった。


 田舎で受けたワナ猟免許の出前試験とは異なり、結果は後日郵送とのことだった。


 一週間後、三人の手元に合格通知が無事に届き、晴れて全員が第1種銃猟免許、網猟免許、ワナ猟免許を取得することができた。


 第2種銃猟免許は、第1種銃猟免許を所持することで空気銃も所持許可があれば使用できる。ただし、ペーパードライバーと同じで、ペーパーハンターでしかない。


 ここからは、経験を重ねることが必要となるが、それは毎年狩猟に出かけることで重ねるだけではなく、学校の授業の一貫として、体系的に段階を踏んで学ぶことになる。


 一気にライセンスという点では、三人がスタートラインに並んだ。


 それは指導者側が予定していた秋までにライセンスの取得というタイムスケジュールからすれば、三ヶ月も早いものだった。

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