第2章 迷走 第27話
当たり前のことだが、大学の研究室では、柴山の進路変更について一悶着あった。
すでに、大学院の入学試験は終了しており、柴山は合格していた。後は、入学金や授業料の支払い手続きという段階での進路変更は、研究室の教授に納得してもらうことに一苦労した。
教授は、大学院を修了してからでも遅くないし、そういう考え方の問題ととらえるなら、狩猟を学びながらでもできるだろうというのだ。
確かに、それも一理ある。柴山の将来を期待してくれている気持ちも伝わってくるだけに、ありがたく思う気持ちはあったが、思いは変わらなかった。
研究室へ所属するのは、普通三年生からだが、柴山はサークルに入らなかった代わりに二年生の夏から「野生研」に出入りするようになっていた。
柴山が興味をもっていたのは、進学のきっかけともなったイノシシ対策であった。
野生鳥獣の中では、シカ、イノシシ、サルによる農作物被害が多い。その中で、サルとシカの研究者に比べるとイノシシの研究者が少ない。
そのため、イノシシのことは良く知られているようで、実はあまり知られていないということを入学当初に知り、それならばとイノシシの研究も行っていた「野生研」へと興味が向いたのである。
二年生の後期からは、先輩の研究の手伝いで実際のフィールドにも出向き、イノシシの痕跡調査などに協力するようになっていた。
学会や講演会などにも積極的に参加していて、教授の目には有望そうな学生に見えていたのであろう。
最後には、「君の両親も納得してくれるなら、仕方がないだろう」というところで、教授は折れてくれた。
教授への申し訳ないという気持ちもあり、その足で実家へと戻り、家族と相談することにした。
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