新たな狩猟者像 ~サーパスハンターを目指して~

wsat

第1章 出会い 第1話

 南関東の郊外にあるキャンパスには、併設されている附属高校もあって、登下校の時間帯には、最寄り駅は大学生と高校生であふれる。


 すでに大学は長い夏休みに入っていて、先週からは追いかけるように附属高校も夏休みとなっている。


 そんな中でも、大学では教職課程の必須科目を担当する非常勤講師の特別集中講義が続いている。

 

 柴山啓太は、中国地方出身の二十一歳。


 県内の進学校から、関東地方にあるこの大学に進学し、現在は四年生である。


 特にやりたいことがあったわけではないが、実家が農家で、昔から爺ちゃんがイノシシを追っ払うのを見ていたし、家の畑がイノシシの被害にあってほとんど収穫できなかったという経験をしたことから、何となく野生動物に興味をもった。大学に進学する際には、生物学科がある大学を志望し、今に至る。


 彼の普段の階段教室の定位置は、教壇側からみた右奥の一番後方の座席だった。


 その日の講座は、外部から講師を招いての公開講座となっており、学外からの聴講者もいて、特別集中講義を終えて別棟の教室から移動して講座開始直前に入った時には、すでに彼の指定席には他の学生が座っていた。


 約二百人が入ることのできる階段教室であったが、ぐるっと見回して空いている座席は、中央の最前列近くだけであった。


「ちぇっ、もっと早く来るんだった」


 白い大型スクリーンには、


 一般開放講座 「野生鳥獣の被害対策におけるベテランハンターによる後継者育成」

 講師 株式会社ワイルドライフマネージメント 上席研究員 山里佳人 氏


と黒文字で映し出されている。


 これまでにも、同様の講座は他大学や一般講座として行われていたものに何度か出席していたが、講師はシカやイノシシなどの生態の研究を専門としている大学教授や研究者であったので、生物学的な講義内容だった。


 正直、今回も同様の講師の講座なら、わざわざ聞こうとはしなかっただろう。


 しかし、今回は講師が「ハンター」であるということとに、まず驚き、目を引いた。これまでの生活の中で、肩書を「ハンター」と記すなんて、物語の登場人物ぐらいだ。


 面白くなければ抜け出せばいいと思い、軽い気持ちで参加するつもりだったが、指定席が埋まっているからと行ってあきらめる程ではなかったことに今更ながら気づいた。仕方なく学科の教授や講師たちが陣取る中央の最前列近くに着席した。

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