第78話 絶対勝利へ
翌々日の朝、メンバーがバスに乗り込む前に梨子はつかさに自分のスパイクを託した。
梨子「つかさ。私、今日はベンチ外なんだ。だから、私のこれ使って。」
赤色のスパイクには炎をあしらったデザインがされている。
つかさ「ありがとう!絶対に勝つから、応援よろしくね!」
梨子は空に浮かび始めた太陽のような笑顔で頷いた。
バスに乗り込むと後藤がマイクを持った。
後藤「さて、遂に決勝の舞台に行くわけだが調子の悪い者はいないな?」
一通り見渡して問題ないと確認すると続けた。
後藤「泣いても笑っても3年生、そしてかれんと一緒にできる最後の勝負だ。必要以上に気負いする必要はないが、相手はエース不在とはいえ難敵になることは間違いない。出し惜しみなくやっていく。」
そんなことを話しているうちにバスは決戦の舞台に到着した。
運転手「到着しました。頑張って下さいね。グッジョブですよ!」
運転手は親指を立てた。
バスを降りるとそこには見慣れた姿があった。
美春「みんなの勇姿、見に来ました!」
樹里「試合には出られないけど全力応援しますからね!」
悠香「必ず勝ってくれることを信じてます!」
萌「皆さんならやれます!頑張って下さい!」
浅野「応援しに来てやったぜ!」
神谷「絶対に勝ちなさいよ!」
佐久間「私たちの取れなかったもの、君たちなら取ってくれるはずだろう?」
吉良「思い切りやっちゃって〜!」
天王寺「幕張から来たからには良いものを見せてほしいです!」
伊東「まさかここまで来るとは!頑張って!」
大森「アンタたちの姿、見てると熱くなってくるんだよ!とびっきりの試合を頼むよ!」
水田「頑張ってね!最高の記事にするから!」
白石「君たちは強い。日本一の素質がある!」
安住「自分を信じて!最後まで走ろう!」
田代「出し惜しみはしないように!」
暁月や保護者、参加できなかったメンバーの他にも沢山の応援が駆けつけた。
メンバーはその人々に手を振って会場の中に入った。控室に荷物を置いてスパイクに履き替えてグラウンドに出ると、既に令和学園が練習を開始していた。佐倉中央はランニングから柔軟体操、パス、シュートとアップをした。
つかさ(やっぱり雷さんはいない…。)
後藤は早めに練習を切り上げさせて控室に選手たちを戻らせた。水田もカメラを構えて待っていた。
後藤「さて、練習の時間を削ってまでする事か分からないが、士気を上げるために今日で最後の選手たちから一言ずつ頂こうと思う。」
夏海「私はサッカーを始めて5年間ずっとGKとしてやってきました。高校に入って初めての大会で3位、そして今ここまで来れたのは皆さんのおかげです。私は今後、サッカーはしないつもりです。今日が最後の試合なので、絶対に勝ちたい。最高の景色、一緒に見ましょう!」
飛鳥「私は言っていませんでしたが、高校を卒業した後はヴィクトリアに所属することになりました。去年の関東大会が終わった後に白石さん達から声が掛かって、テストを受けて合格をすることができました。私の強みである足の速さを使い果たさせるぐらい走らせて下さい。絶対勝利!私たちならやれる!」
マヤ「実は私は海外の大学に進学が決まってます。将来、サッカーを生業にするかは分かりませんが、桃子と同じように日本にはあまり帰って来れません。だからこそ今日の試合で最高の思い出を作りたいと思います。いや、作りましょう!」
亜紀「高校からサッカーを始めて、正直な話ここまで来れるとは思っていませんでした。毎日の練習の中には辛いことも沢山あったけど、みんなが居たからこそここまで来れた。折角ここまで来たなら優勝しましょう。佐倉中央の底力を見せてやりましょう!」
桃子「私はここで優勝してからミラノに行きたい。私1人だけでなく、みんなで掴む優勝こそ価値があるものだと思ってる。確かに関東でボコボコにされたけど、今度は私たちがボコボコにしてやるつもりでやってやろうぜ!最後までやりきろう!」
かれん「私は春から岡山県に引っ越すことになって、この大会にも出ている作明高校に通うことになりました。もし、来年も全国大会に出れば当たるかもしれません。でも、今はそんな事よりも目の前の戦いに集中します。笑顔で私たちの最後の試合を終えられるよう、全員で一丸になって頑張りましょう!」
光「私も飛鳥と同じようにヴィクトリアの入団が決まっている。恐らく佐倉中央でサッカー選手の輩出は初だろうし、3人も出るのはすごいと思う。サッカーを始めてから10年以上、ここが一つのターニングポイントだと思っている。優勝を掴んで最高の状態でデビューするか、準優勝で終わって微妙なスタートを切るか、私は勿論前者がいい。今ここにはいない決勝の舞台に立つことのできなかった選手たちの分も合わせて、必ず勝とう!」
チームが一つになったところでスタメンが発表された。決勝戦のスタメンは以下の通り。
GK:1 夏海
CB:2 光
LSB:19 雛
RSB:3 飛鳥
LWB:16 柚月
RWB:7 かれん
DMF:8 亜紀
DMF:20 仁美
OMF:9 桃子
OMF:18 伊織
CF:10 つかさ
ベンチ入り
6 マヤ 11 千景 12 愛子 13 真希 14 花
21 瑞希 22 咲
ベンチ外
4 樹里 5 悠香 15 美春 17 梨子
いつものように肩を組むのではなく、両手を広げて手を繋いで組んだ円陣の中で選手は一人一人最後の戦いに臨むという大役を背負っている事を実感していた。令和学園の掛け声が聞こえると、光は深呼吸した。
光「佐倉中央、絶対勝つぞー!」
その瞬間全員が一気に手を引いて肩を組んだ。
「おーーー!!!」
会場からは既に大きな拍手が沸き起こった。先行は令和学園ボール。つかさはセンターサークルとラインの境目ギリギリで既にボールを追う準備をしている。ちらりと目線を令和学園ベンチに送ると、そこには雷がベンチコートを着て椅子に深く腰掛けていた。
雲一つない快晴の空の下、決勝のホイッスルが高らかに鳴らされた。
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