『29』 行き止まり

        1つ前のページ⤴『21』




「店長に確認しました。トイレの鏡は開店する前から割れていたんです。もちろん、あなたがトイレに行った時も鏡は割れていたはずです」

「……っ」

 また彼女は口元を手で覆った。失言に次ぐ失言。ついに彼女は黙ってしまった。

 口をつぐんでしまえば、失言をすることはない。

 だがしかし、それは会話の主導権を探偵に渡すことになる。

「ここでおかしなことになりますね。あなたの口紅は曲がっているわけでもはみ出しているわけでもない。つまり、きちんと鏡を見て整えられているということです。しかし、トイレの鏡は開店前から割れてしまっている。つまり、他の鏡を使って整えたというわけです。おそらく、ポーチの中の手鏡でも使ったんでしょう」

「………………」

 彼女は肯定も否定もしない。俺は続ける。

「しかし、あなたはトイレの鏡が割れていたという事実を知らなかった。これは、あなたがトイレに行っていないという事実を表しています。しかし、。これは、何のための嘘なのか?」

「………………」

 彼女は肯定も否定もしない。顔はどこか強張ってきている。表情からも何も悟らせまいとしているのだろう。その強張りは何よりも雄弁だ。

「たとえば……トイレの先にあるどこか別の場所に行っていた。それを隠すために、トイレに行ったと嘘をついた」

「私はトイレの先になんて用事はないわ。話は以上よ」

「そうですか」

 俺は店内を見渡す。トイレの先には、店員以外は立ち入り禁止の札が掛けられている扉があった。バックヤードだ。

 ここも、調査する必要があるな。



 ◆ 新しい調査場所が解放されました

 バックヤード→『10』ページへ






 ▶手がかりJを持っている場合、『29』+手がかり番号Jのページへ

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