『21』 魅惑的な唇のわけ

        1つ前のページ⤴『8』



「おかしいですね。トイレの鏡は割れていました。ですから、あなたの口紅はそんなに彩られるはずがないのです。実際に、粒越さんのほほにはあんこがついていたのですから。あなたが教えてくれた事実です」

「か、鏡が割れていた? そんなまさか」

 口元を左手で覆う。細い指に光るネイルが綺麗だ。

 これは、間違った発言をしてしまった自分の口を覆い隠そうとする犯人によくある仕草である。彼女は何らかの隠したい事実を持っているはずだ。

 彼女は、数秒黙って何かを考えていた。重い口を開く。

 次は、変なことを口走らないように、慎重に言葉を選ぶ。

「わ、私がトイレに行ったときは、鏡なんて、割れてなかったわ!」

「なるほど。では、あなたがトイレに行き、鏡を使った時はまだ割れていなかったということですね」

「そう。鏡が割れていたかなんて、あなたにはわからないでしょう?」





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