『6』 門崎 紫外について
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「彼女……、門崎さんの何がそんなに良いんですか?」
「あぁ、彼女は『かんざき』という名前なんですね。一体、どういう字を書くんですか?」
しまった。個人情報をばらしてしまった。探偵としてはやってはいけないことだ。
あわてて門崎さんの方を見る。門崎さんは、お会計の札をこちらにひらひらと振っていた。あ、これは絶対に
「質問が聞こえていないようですね。これはあくまでダンゴ盗難事件についての事情聴取なのです。関係のないことを話して逃げるのは、自分にやましいことがあるからですか?」
「いいえ。決してそのようなことは。四方面美景はどこに出しても恥ずかしくない男ですよ」
彼は胸に手を当て、目を閉じた。流れるような所作は舞台俳優を彷彿とさせた。スポットライトを彼は浴びていた。俺はモブか、黒子だろう。会話のスポットライトを俺の方に戻した。俺は、探偵で、彼は被害者。質問の主導権は俺にある。
「ではもう一度お聞きしましょう。あなたが席を離れた原因を明確にしたい。その原因はあなたがこちらの席に来たこと、ひいては私と同席の女性に会いに来たのでしょうから。どうしてわざわざ席を離れて、こちらに来たのですか?」
「端的に言えば、ひとめぼれですね。あまりひとめぼれはしないほうなのですが、あの女性がお手洗いに立つ姿に見とれてしまいました。運命の出会いはどこで巡り会うかはわかりません。あの時声を掛けていれば。そう後悔するくらいなら今声を掛けるべきだと思いました。今は、後悔していません」
「それにしては、名刺ではなく、くしゃくしゃの紙を手渡したのですね。ここに書いてある電話番号も本当か怪しいものです」
「それは……、申し訳ありませんでしたとお伝えください。名刺を楽屋に置いてきてしまいました。いつ運命の出会いがあっても良いように、財布と共に持っていなければならなかった。痛恨の極みです。しかし、この機会を逃したら一生会えないかもしれませんでした。仕方なく、近くにあった紙を拝借したんです」
「近くにあった紙?」
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