第12話大河信郎38歳

代貸し、またぶつぶつ一人言言ってんな。


代貸しは気づいてないみたいだけど、けっこうしょっちゅう小さな声がもれている事が多い。


今回は、ま、こんな状況だし仕方ないか。


わかる。わかるよ。

俺にも年頃の娘が居るし。


俺は、この世界に入ってずっと代貸しの部下でやって来てるが、この人実際すごいよ。


代貸しの興したシノギは、全てバカ当たりして、その類いまれなる商才のおかげで、今や《真王会》の直参ファミリーの一つになっちまった。


おかげで、俺達の身入りも一気に上がって、一流企業の平均年収よりも上の年収をもらっている。


だから中堅所ですら、着ているものはハイブランドのスーツに、車は高級車を乗り回している。

まるで24区バブルだ。

ちなみに今日の俺のスーツはGUCCIだけどね。


言ってる場合じゃねえ。

今向かってる場所はまさに…

代貸しも気が気じゃねーだろうな…


畑中のやつ、いきなり変な電話よこしやがって。

なんでうちが、他所のトラブルに出張らなきゃいけねーんだ。

いくらあいつが、昔若い頃東京拘置所で一緒になったからって、その時俺に世話やいてくれて、初めての拘置所で弱気になってた俺が、うっかり兄弟の仲になってしまったからってよ。

ただ今回のは、さすがにうちの代貸しでもなんともできないだろうな。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る