十話 三つの事実と自己紹介
「ここに来て三つの重大な事実に気付いたわ。」
今プラッツの背には先程迄刃を向けていたレイアという女剣士とアルテナというお嬢様風の令嬢、そして泡を吹いて気絶している老骨な執事、肥え太った身形の良い男の四人が追加で乗っている。
「なんだその重要な事実とは?」
「一つ、ミコト、アンタに解説を任せたら筋肉話ばかりするから文字量とルビ振りが無駄に多くなって作者は大変お立腹よ。」
「貴様、一体何を言っている?」
「二つ、せっかくのレイアとアルテナちゃんの初登場シーンにも拘らず筋肉談義に埋もれて碌に紹介もできないまま無駄に二話分も戦闘シーンに食い潰されてしまったわ。」
「あの…プロ…フレイヤさん?何の話をしているのですか?」
「みっ…三つ…この筋肉糞達磨の所為で二人が…既に私の名前を間違えて…呼びつつあるのよっ!アンタこの状況、どうしてくれんのよっ!」
「アルテナお嬢様…名前を間違えては失礼ですよ。この方はプロテインさんですからね。」
「うぅ…既にレイアは私の名前を完全にプロテインだと思ってるし…」
「レイア、貴様其れは失礼だぞ。もっと敬意を込めて美と豊饒の女神と書いてプロテインと呼ぶんだ。」
「えっと…
「うむ、ナイスイントネーションだ。」
「ワタシの名前はフレイヤよっ!!!!いい加減ホントに怒るわよっ!!!」
「あわわ…フレイ…
「うぅぅぅ…アルテナちゃんまで…もういやぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁっっ!!!」
草原に
「してオレっ娘よ。此処からお前達が向かっている街まであとどのくらいの距離があるんだ?」
「そうだな。此処からだとこのプテラ・サブラの移動速度と距離を考えればあと一時間ってとこじゃないかな?」
「一時間か。其れならば
「いやいや…何々!?そんなに肩を揺らして何する気なんだ!?まさか…真昼間から俺達を…」
俯きながら肩を揺らしてゆっくりとレイアとアルテナに近づくミコト。
傍から見てる限りミコト、アンタ悪役ってか露出狂がか弱い少女を襲っているようにしか見えないわよ?
レイアなんて震えながら身体を這ってアルテナちゃんを守ってるじゃない。
「や…やめろ…やるなら俺を…アルテナだけは…」
「
己の声が山びこの様に響き渡る中、俺は再び二人に渾身のモスト・マスキュラーでその全てを曝け出した。
………………………………………………
「フゥ…此れで俺の全ては伝わっただろう。さ、次はお前たちの番だ。」
「えっ!?あ…その…わ、ワタクシ…男性のその…昂るアレをこんな真近で見せつけられるのは初めてで…ごめんなさいっ!」
「アルテナちゃん!貴方が謝る必要は一切ないわっ!」
「アルテナになんてもの見せびらかせるんだ!?その…猛々しく聳り立つモノを早くしまってくれ!!」
アルテナちゃんはレイアが背で庇いながら後ろを向いて蹲ったけど、レイアは何だかんだ言いながら興味津々に眺めているようね。
顔を赤らめながらも少しニヤついている様子を見る限り結構なスキモノかもしれないわ。
もしかしたらレイアとは良い友達になれるかもしれない。
「おお…すまない。俺も新たな世界に来て浮かれすぎていたようだ。これはレディに対してとんだ失礼をした。暫くすれば服も元通りになるから其れ迄このままでいることを許してほしい。」
そう、先程金剛石のような肉体になった際に散り散りになったミコトの服は七割程度自動修復していた。
しかし再び腰下から胸上辺りまでが弾け飛んで現在は三割程度が修復している状態に逆戻りしている。
というかあの服は神々の超高級品のブランドものよ!それを何度も何度も惜しげもなく破り捨てて…その服を仕立てた神々に顔向けできないわ。
「まぁ…それなら仕方がないな!しかし先程の筋肉もそうだが、そんな自動で修復していく服なんて見た事もない。何処かの最新技術か何かか?」
「ああ、此れは
正直に事実を話そうとしたミコトに飛び掛かり暴れるミコトに必死にしがみ付いて言葉を漏らさないよう口を塞いだ。
『ちょっとっ!アンタそんなこと暴露したらワタシが女神だって気付かれちゃうでしょ!!んぶっ!?これでもし戦の最前線なんかにワタシが立たされたらどーしてくれんのよ!?』
「その為に俺達はこの世界に来たんだろう。何を今更…」
『ワタシはアンタに無理矢理連れてこられたの!いい?こと戦闘においてワタシは戦闘力たったの5のゴミよ。そんなワタシが死地にでも投げ出されれば其れこそ神生の終わりなの!!汚ねぇ花火にはなりたくないのっ!』
「そんなことは無い筈だ。俺の図る
『と・に・か・くっ!ワタシが女神だって気付かれるようなことはお願いだから話さないでっ!ワタシまだ死にたくないのよっ!!』
ミコトに両頬を鷲掴みにされながらも耳元でコソコソと小声で語りかけた。
ワタシが最前線に出ても魔王討てないからねっ!?其処等辺ちゃんとわかってほしい訳!!!
「ふん、まぁ致し方ない。
「み…ミコト…ようやくワタシの事を大事にしてくれて…ん?なんだその手は?」
徐に差し伸べられたその手がワタシの目の前で指をわしゃわしゃしている。
「俺のストマックが囁いている…
「…そーよね。ミコト、アンタはそういう奴だった。」
◇◇◇
「では気を取り直して
取り敢えずミコトの
「はいっ!先ずはワタクシからですね。ワタクシは古くから此処レイティス領を代々受け継ぐ領主を父に持つ一人娘、アルテナ・フォン・レイギャルンと申す者ですわ。こっこんな見た目ですが今年で一応十八歳です。」
顔を赤らめてちらちらとアタシを見ながら恥ずかしそうに声を張り上げている。
大丈夫よ。貴方の胸はまだ可能性に満ち溢れているわ。
「成程、領主の御令嬢か。余程育ちが良いのだろうな。貴様のそのしなやかで上質な
徐にアルテナちゃんの手を取り腕を眺めるミコト。
「ちょっと、ミコト待とうか。アルテナちゃんを其の道に誘うのは…止めようね。」
「一体何を言っているんだ?俺は只
「はいはい、じゃ次レイア!自己紹介宜しく!」
これ以上ミコトのペースに飲まれるともう一話分筋肉の話で無駄になってしまうわ。
其れだけは何とか阻止しなければならないわ。
「あ、ああ。俺はレイア・イン・フロージィ。炎を操る魔法剣士だ。訳あってこんな口調だが其処等辺はあまり気にしないでほしい。」
「ホントはとっても女の子らしい子なんですよ。レイアちゃんは。」
「へー…まぁ確かに見た目だけならそう見えるけど…」
ぱっと見レイアはレイピア片手に騎士道を歩んでいそうな感じの寡黙な麗人といった印象。
しかしその見た目とは裏腹にガニ股で蹲み込んだり剣を肩に担いだりと…仕草はまるで野蛮な男のような振る舞いだ。
ワタシはアルテナちゃんと二人でコソコソと話しているがレイアはそんなことは気にも留めずミコトの下腹部をずっと見ている。
「レイア、其処で倒れたままの二人もお前たちの仲間なのか?」
「えっ!?えっと…執事の方は確かに仲間だよ。只コイツは…仲間とは呼べないな。」
「もしかして訳ありな関係?」
「ああ、色々とな。」
怪訝な様子で気絶したふくよかな男を睨むレイア。
アルテナはその様子を見て俯いていた。
「あの…差し支えないなら詳しく聞いてもいいかしら?」
二人は互いに見つめ合いアイコンタクトをとって頷いた後、レイアが静かに語りだした。
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