第3話 追放は新たなる旅立ち その3

 ブランにまたがり、暗黒の森をトコトコ歩く。

 森最強の生物に乗っているせいか、さっきまであんなに怖かった攻略難度Sランクの森が全然怖くない。


 と思ったら、


『ぶるおおおーっ!!』


 いきなり、小山ほどもある大猪が出てきた!

 ヒャアアアア怖いぃー!


 俺もテイマーの端くれなので、こいつが何者なのかは分かるぞ。

 これはアーマーボア。

 毛皮が変化した装甲を纏った大猪で、Aランクモンスター。


 つまり、小さいドラゴンくらいの脅威度がある恐ろしいモンスターだ!

 だが、俺が乗っているモフモフ犬はSSランクモンスター、マーナガルム!


「や、やれんのかブラン」


『わふーん』


 任せてよ、という感じで、ブランが鼻を鳴らした。


「よし、任せた! いけ、ブラン! 自由に攻撃だ!」


『オオオオオ──ンッ!!』


『ぶるおおおおーっ!!』


 マーナガルムと、アーマーボア!

 モンスター大決戦の始まりだ!


 アーマーボアが突っ込んでくる。

 これを、マーナガルムはひょいっとかわし……。

 アレ? 避けない?


『ふんっ』


 ブランは鼻で笑いながら、頭を低くした。

 そして、アーマーボアの突進を真正面から受け止める。


 ずどーんっと凄い衝撃が俺を襲った。


「ぎょえーっ」


 俺はブランにしがみついて堪える。

 ちなみに、ブラン自身は明らかに自分よりもずっと大きなアーマーボアとぶつかったのに、びくともしていない。


『ぶ、ぶる、ぶるるああーっ!!』


 アーマーボアが吠える。

 必死にマーナガルムを押そうとしている。

 だが、アーマーボアの蹄が地面を削るばかりでちっとも進まない。


『わふん?』


 おや?

 今何かしたかな?

 みたいな顔をするブラン。


 強い!

 アーマーボアとは、次元が違う。

 なるほど、Sランクパーティ複数でないと狩れないSSランクモンスターというのは本当だ。ただのモフモフした犬じゃなかった!


『わんわん』


「あ、俺にしっかり掴まっててって言ってるのね? よしきた!」


 俺は全身で、ブランのモフモフボディにしがみついた。

 うほー。柔らかい毛!

 その下のムキムキボディ!


『オオオオーンッ!!』


 ブランは咆哮をあげた。

 そして、アーマーボアを真正面に密着させたまま走り出す!


 なんと、アーマーボアが抵抗もできず、どこまで押されていくのだ。


『ぶ、ぶ、ぶるおおおーっ!!』


 それはもう悲鳴だった。

 暗黒の森最強モンスターに挑んでしまった不幸を呪うがいい、アーマーボア。

 それからお前はモフモフしてないから俺もテイムできないのだ……。


 森の外れまで押し出されたアーマーボア。

 マーナガルムはここで、イノシシの巨体の下に鼻先を潜り込ませた。

 これはひょっとして。


『わふん!』


『ぶおおおー!?』


 なんと、首の動きだけでアーマーボアを空高く跳ね上げた!

 見上げるほどの高さまで吹き飛ばされて、アーマーボアが悲鳴を上げながら落ちてくる。

 そこに、ブランが跳躍した。


『がふーっ!』


 牙が一閃。

 アーマーボアの頭が切り飛ばされた。

 なんて切れ味だ。


 アーマーボアは、痛みすら感じる間もなく死んだだろう。

 慈悲の攻撃かもしれない。


『わんわん』


 ブランが俺に振り返った。


「なにっ、もしかして、俺のご飯のために狩りをしてくれた?」


『わふーん』


「うおー! 偉い、偉いぞブランー! さっそくご飯にしよう!」


 ということで!

 お料理タイムとなるのだった。


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