死後とは切ない

がじるん

プロローグ



「……どうでしたか?」


 ビルの屋上。

 空は黒に染まっているが、街にはまだ光が溢れて返っている。下を見れば車がひっきりなしに行き交っている。

 そんな時間に、1人の男と黒装束に仮面を被った怪しげな人がいた。

 彼らはビルの外に足を投げ出すように座っていた。


「……最悪、でしたね」


 男は答える。

 とても良い返事とは言えないハズなのに、何故かその表情は晴れていた。むしろ笑みまで浮かべている。


「性質上私も閲覧するのですが……確かに酷かったですね。今まで見てきた中でも指折りですね」

「ハハッ、そう言っていただけると何か捨てたもんじゃないですね……僕のも」

「私共からすれば捨てる人生などありはしない、とフォローしておきますね」

「……ほんとに、ありがたいです」


 ヨイショと言って立ち上がる男。


「もう行きますか?」

「ええ……アナタと話すのは凄い心地良いからちょっと揺らぎましたが、よく考えたらそれだけですからね。もう決心が付く内に」

「そうですか。あちらには私の上司がおりますので、お会いしたら媚びを売っておくことをオススメします」

「……フフッ。了解しました。では───」


 そう言って男はその場から消えた。

 

 そして下が騒がしくなり始めた頃に、黒装束の人は黒の空を見上げて息を吐く。


「……やるせねぇなぁ」


 その声色は、少し震えていた。

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