そんな私は、ハリネズミ
私は作家に向いてない
第1話 オランダ
ここはそう、心地よいそよ風に見渡す限り一面に広がるチューリップ。あーなんて平和なんだろうか。昼過ぎの午後3時洋菓子を食べながらコーヒーをいただく。あー優雅だ。僕を止めるものは何もない。この時間が永遠に続けばいい。僕は今この世の中の誰より幸せを全身で感じている。全身で。
チリリリリン、、、僕の永遠かと思われた幸せはこうして今日もまた、オランダでは聞きえない騒々しい雑音によって現実にたたき起こされる。最悪だ。ヒヤッと冷たい風が全身を駆け巡る。僕の幸せ時間は実に7時間と10分、今終わりのゴングとともに布団がめくられ恐ろしい顔がこちらをのぞき込む。母だ。頼んだのは僕だがこんなに訪れてほしくない時間というのは、歌のテストと今くらいなものである。あー始まってしまった、僕の一日が。今日は歌のテストもある。当然いつもより体は重い。10倍増し位に感じる自らの体重と重力に刻一刻と過ぎ去る時間。あー不憫だ哀れだ可哀そうだ。僕は今全身を鎖で縛られた。この時間が今日の夕方まで続くのか。今この世の誰より安眠に包まれる楽園から追放される悲しみを全身で感じている。全身で、、、
―なんてことを考えている間に時刻は7時50分、いつの間にか母の姿はない。うーわ最悪。こんな時に限ってメガネは姿を隠し、もういいよとばかりに僕は部屋中をさがす。僕の最悪は今日で2回も更新された。
「あった、早く支度を…」
あっもう8時30分。たった今わたしのいないクラスの授業が始まった。メガネがざまあみろとばかりに存在感を発揮する。僕の最悪はまたしても更新された。
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