五大将参上
「五大将皆に話したいことがあるから、謁見の間に来るように」
何の前触れもなく魔王から、俺たち五大将に召集がかかった。
俺、ソータ・グリメロは召集に応じ、謁見の間に向かった。
謁見の間に着くと、既に他の四将がそろっていた。
「よお、ソータ遅かったじゃないか。もしや道を忘れたか? その歳でボケたら困るぜ」
と、開口一番俺に軽口を叩いたのは真っ赤なポニーテールが目立つ、五大将筆頭の竜神・ベリー・ブラットサンデーである。
竜族を束ねる竜神といわれるだけに長身だ。
彼女と俺は五大将では最も長い付き合いで、義兄弟の契りを交わした仲である。
おっと相手は女性で年上だから、この場合は義姉弟か。
「なわけないだろベリ姉。気が重くてなかなか足が進むなかったんだよ。
俺はベリ姉に率直な気持ちを述べた。
事実、五大将全員に対し急な召集ということは、そのぐらい重大な問題でも起きたのかと、危惧していた。
「どんな敵が来ようとアタシが片づけてやるから心配ないっていつも言ってるだろ」
握り拳を見せ、にかっと笑ってみせるベリ姉。
この義姉ベリー・ブラットサンデーは飄々としているが、五大将最強だ。
竜神といわれるほどに圧倒的な実力を持っている。
義姉妹の契りを結び、共に腕を磨いてきた俺たが、彼女に一向に追いつけそうにない。
「あら先生、わたくしのことも忘れてもらっては困りますわ」
妖艶に微笑み、俺に腕を絡ませてきた茶髪ドリルツインテは、吸血鬼の始祖シフォン・メープルだ。
彼女は五大将で吸血鬼族の最長老である。知らない者には妙齢の美女にしかみえないだろう。
当初シフォンは魔王軍に所属していない独立魔族だったが、その実力を見込んだ俺が口説き、魔王軍に迎え入れた。
ま、その過程で色々あったのだが、今は割愛しておく。
そして俺が戦闘技能を教え、一定の実力が備わった折で、五大将の一員となった。
いわば教え子なので、俺のことを先生と呼ぶようになった訳だ。それにしても・・
「また腕を上げたなシフォン。今俺の懐に飛び込んだ時、全く気配を感じなかったぞ」
「お褒めにあずかり光栄ですわ」
もう俺の実力を超えているから、師弟関係といえなくなってきてるんだよな。
「ははっ、ソータ、その気になればシフォンに殺されてたなッ」
ベリ姉に笑われてしまった。我ながら情けないぜ。
「いやですわベリー様ったら。私が愛する先生を殺めるわけないじゃないですか。もっとも、」
とシフォンは俺に上目遣いをし、
「ベットの上では一度殺すほどの快楽を味あわせたいなんて思ったり♪」
恍惚とした表情で舌をぺろりと出した。
「お手柔らかに頼むよ」
何を隠そう俺はシフォンと師弟関係と同時に肉体関係を持ってるので、こんなやりとりはしょっちゅうである。
その刹那、シフォンめがけて黒い斬撃が襲う。しかし動じることなくシフォンはその攻撃を受け流した。
「なんですの? わたくしと先生の甘いひと時を邪魔するなんて無粋ですわね」
「無粋なのはあんたよ! 厳粛な謁見の間で破廉恥な!」
斬撃の犯人で今声を荒げたのは、真っ白な縦ロールロングの死神プリィ・レアーズ。
俺のもう一人の教え子で、やはり五大将である。
彼女は孤児だったが、このまま終わらせるのは惜しいと思い、俺が拾い、育て上げた。
才能に溺れず、不断の努力と学習の結果、今や彼女も俺を凌駕する強力な将だ。
期待以上の優等生といえる。
「わたくしと先生の仲を妬いているのね。みっともないですわよ♪」
「なっ私はそんなつもりじゃ、ただ時と場所をわきまえなさいと言っているの!」
教え子同士で共に五大将なのに、どうも二人は衝突しがちだ。
ほとんどプリィがシフォンにやり込められているけどな。
「我慢は身体に毒よ。貴方も自分の欲望に忠実になりなさいな♪」
「あ、あんたねえ。先生が何も言わないをいい気になってっ」
と、まずいなそろそろ止めておくか。
「まあまあ。ここは俺に免じて許してやりなさい。俺はプリィのこともちゃんと深く深く愛しているぜ」
俺はプリィに抱き着き、なだめた。
「も、もう先生ったらっ」
まだ何か言いたげだったが、落ち着いてくれたようだ。
シフォン同様にプリィとも『そういう仲』だったりする。
「仲良きは美しきかな。わっちもお二方に妬いてしまいますえ」
「久しぶりだなキャラ子! 元気してたか?」
この独特の口調は、堕天使で五大将のキャラメルン・カステーリャだ。
皆からはキャラ子の愛称で呼ばれている。
かつて天界から攻め込んできた大天使だったが、戦闘の末、俺に破れた。
しかし敵ながら見事だったので、魔王配下に帰順させたという経緯がある。
当時は堅物大天使様だったが、説得の過程で堕天使に変身した。
純白だった翼も真っ黒。白い肌も褐色になり、黒髪ロングだった髪も、金髪サイドテールと化した。
さらに生真面目な性格もだいぶ垢抜け、現在の独特な口調になったというわけだ。
「たまには、わっちのことも可愛がってくれませんか? もうさみしくて、さみしくて仕方ないでありんす」
シフォンほど露骨ではないが、艶っぽい仕草で俺を誘う。
お察しの通り、教え子であり、また男女の仲で、逆転した師弟関係だ。
『青は藍より出でて藍より青し』とはよくいったものである。
「最近事務処理がたまっててなかなか相手ができなかったんだよ。近い内に遊んでやるよ」
「ほんまどすえ? 約束でありんすよ。指切りしましょう。約束破ったら、わっちとても悲しいでござんす」
自分の指に俺の指をからめてくるキャラ子。
嬉しいけど、ちょっと怖いぞそれ。
「今日もモテモテだなソータ。姉として誇らしいぜ!よっ色情魔!」
ベリ姉に茶々を入れられた。照れる。
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