俺の不遇職《フラグ建築士》がいつの間にか剣聖より恐れられていた件について

卯月 為夜

第0章 プロローグ

第0話 悪魔の子と神の化身

俺は、いつも皆から悪魔の子と呼ばれながら生きてきた。

俺が言ったことが現実に起こってしまうからだ。

どんなに些細なことでも、またどんなにありえないことでも俺が想像して口に出したことが起こってしまう。

しかしこんな俺でも両親は何も言わずに愛情を注いでくれた。


その両親のおかげで俺は成人の歳まで生きている。


そして今日、俺がなぜ悪魔の子と呼ばれ続けたか分かるかもしれないのだ。


俺の名前はラント。悪魔の子だ。


「ねえラント!今日は成人の儀式だね!」


俺の隣で歩いているこいつは、俺の年代で唯一の理解者、リムルだ。



「ああ、そうだな…もしかしたら俺が悪魔の子と呼ばれ続けた理由が分かるかもしれない」


「うん、分かると思うよ!絶対に!そして二人でパーティーを組んで冒険者になろうよ!」


「ああ!」


俺とリムルの夢、それは、二人で冒険者になることだ。

しかし今日の儀式を乗り越えなければ冒険者にはなれない。その儀式は、『職業の鑑定』と呼ばれている。


この儀式は、一人ずつ前に出て神官の持つ水晶に触れる。ただそれだけの事だ。

しかし、これでその後の一生が決まると言っても過言ではない。

なぜかというと、所持している職業によって就ける

仕事が変わるのだ。


例えば、鍛冶屋になろうと思っているやつが

農家向きの職業を持っていたら鍛冶屋になんて到底慣れない。そういうことだ。

また、職業にランクというものがあり、

上から順に

S→A→B→C→D→E→Fとなっている。

このランクによっても仕事に就いた後で有利不利が分かれるのだ。



***

俺たちが昔のことを振り返りながら歩いていると、神殿が見えてきた。


そして神殿の中に入ると、成人の儀式の間に案内される。

「ここで儀式を行いますので、暫くお待ち下さい」


巫女さんがそう言うと、俺たちは用意された敷物に座った。

「なあ……リムルってどんな職業なんだろうな」


「んー?私は普通に戦闘職だと思うんだ」


「いや、なんか凄いのが出そうだな」


リムルは強くて、いつも虐めるやつから俺の事を守ってくれた。

本当だったら俺が守らないといけない立場だったんだろうけどな。


俺がため息をついた時、


「それでは、職業の鑑定を始めたいと思います」と言う声が儀式の間に響き渡った。




「まず、この水晶に触れて下さい。すると、水晶に職業が浮かび上がります。その職業を私が読み上げますので、職業を聞いた後は座っていた場所に戻って下さい。ではまず一人目、カーンさん、こちらに来てください」


カーンと呼ばれた男が、水晶に手を触れると、

水晶が光に包まれる。

その様子を見た俺や他の奴らは、おお……と言って驚きを隠せずにいた。


「カーンさんはCランクの剣士です!」



会場に神官の声が響き渡った。すると、他の皆が次々に拍手を始める。


ちなみに今のカーンという男は、普通の剣士

の職業だった。

Cランクと言うのは、いわゆる凡人のことだ。


「きれいだったね……」


「ああ……ただあんなんで一生が決まるなんて俺はおかしいと思う」


「私もそう思うよ。でもね、これは私たちにはどうしようもない事なんだよ」

いつも「えっ!?石って食べらんないの!?」だの「えっ!?トンカツって豚のことだったの!?」だの言っているリムルが虚しそうな顔をしながらそう言った。


なぜか俺はそれを茶化す気にはなれなかった。



***


そしてしばらくたち、リムルの番がやってきた。


「それでは、続いてリムルさん。こちらへ」


神官に呼ばれたリムルが席を立つ。



「ラント、先に行ってくるね!」


そう言ってリムルは神官の待つ壇上に上がった。


「では、ここの水晶に触れてください。」


神官がこう言うと、リムルは水晶に触れた。


俺はなぜかさっきまでさんざん見てきたはずの

水晶が、今までよりも美しく煌々と輝いているように感じた。


しかしそれは間違いではなかった。


神官がリムルの職業を声を上擦らせながら発表した。


「リ、リムルさんの職業は剣聖……Sランクです……!」



「--!!」


俺はその瞬間、皆の間に動揺が走ったのがわかった。


神官や巫女に至っては、神のお導きだ……

と言って祈りを捧げている者までいる。


当の本人のリムルはと言うと……


微笑みのようなものを浮かべていた。


他の人からしたらニコッと笑っているように見えるかもしれないが、俺にはわかった。


リムルの口が動いている。


     ごめんなさい


俺に向けて言っているのがわかった。


そう口を動かした後、巫女によって連れていかれ、扉の向こうへと消えていった。



いよいよ俺の番が来た。


「そ、それではラントさん。こちらへ」


神官にそう言われると、足が震えるのを抑えながら、

俺は立ち上がった。

そして俺は何とか壇上に登ると、神官の前まで行った。


「では、この水晶に触れて下さい」


神官がそう言ってきたので、俺は水晶に触れた。

すると先程のリムルと大差ない程の輝きを放った。


そしてその様子を見た神官が一瞬驚きの表情になった。

しかしその後に神官が見せた笑顔は、なぜかとても醜悪なものに見えた。


「えー…ラントさんの職業は…フラグ建築士。Fランクです」


「は?」


俺は思わず変な声が出た。

そして周りも状況が飲み込めたようで、

次々と俺を嘲笑うような声が聞こえてくる。



ああ…なんか虚しくなるな。

俺なんかやっぱり何にもできない悪魔の子、、、、なんだ。


俺はおぼつかない足で元いた席に戻った。


……それからのことは覚えていない。気がついたら俺は家に戻っていた。

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