第二十話

「ふぅあーぁぁぁぁぁ~~~~~。二度寝ならぬ三度寝をしていました。これが、休みの醍醐味、ですぅ――――すぅ、すぅ、すぅ、すぅ、すぅ、」


 

 剣をくれました、お子さま英雄さん。

 お子さま英雄さんが持っていた剣の鞘が見つからず、わたしの持っていた剣の鞘を欲しいと言ってきたので、差し上げました。

 すると、お礼として。

 

 ただ、渡された剣(ウッパニシャッドさん――ししょう)――――持てなかったんですよねぇー。

 

 教典の疑似人格ウッパニシャッドの封印を強制解除した。わたしの特異体質を――過信していたそうです。

 どんな特異体質だったかというと――――ミラータッチ共感覚でした。

 ミラータッチ共感覚って、なに? と、声が聞こえてきた気がしたので、お答えしておきましょう。

 共感覚という特殊体質のなかの一つであり、他者が触れているのを見ているだけで、自分が触れていると触覚が認識する体質だそうです。

(アートさんが、教えてくださいました)

 あ、

 ミラータッチ共感覚を持っている人は、極めて少ないらしいです。

 そんな、

 わたしのミラータッチ共感覚は、より情報処理特化した神経細胞複製ニューロン・クローンと呼ばれる、タイプだそうです。

 居候さんが所属している組織で、統括している。技術開発部連中、皆、泣く――けど――情報部連中、皆、喜ぶ。

 と、ほくそ笑んでました。



 わたしの、ニューロン・クローンは。

 なんでも、ミラータッチ共感覚でも超えることのできない、境界線である。自我と他我を超えしまうことが、できるそうです。

 お子さま英雄さんの説明によれば、自我を保つための安全装置が、取り付けられていない状態らしいです。

 普通なら――廃人、一直線。との、こと。

 

 そうですね、例えるなら。

 

 目の前で人が転んで怪我しました。

 普通の人はそれを視たとしても、痛そうだな。と想うだけであって、自身の肉体(正しいくは、脳)は、なんの支障もないと判断します。

 自身が怪我をしたのではなく、あくまでも、怪我した人を視たという認識するからです。

 わたしの場合は、

 ミラータッチ共感覚(神経細胞複製ニューロン・クローン)により、脳が、自身が怪我をした人と同様の怪我をしたと、認識するそうです。

 その状態で平然と日常生活していることが、驚異的な精神と肉体の持ち主だ、と。おっしゃっていました。

 ――人は思い込みで、死ねる。そう、なので。


「わたし、てんさい、ですか?」

「いや。じぶんは、天才じゃなくって、天然やから。そこのところ、間違ったらアカン、で」

 と、注意されました。

 

 わたし、遠回しにだと、言われた、気が……?



 お子さま英雄さんが、所持している梵我一如マスターキーを一時的にでも、複製、できるだけの肉体と精神を持っていると判断して。わたしに、ウッパニシャッドさんを譲ることにしたそうです。

(封印を解除して、出してくれた。お礼も兼ねて、らしいです。ぅん、ふういん?)

 対魔大戦時でも、なかなか、レヴェルの高い人材らしいです。あと、小声で掘り出しモン、目っけ。って言っているのが、聞こえてきました。


 で、


 わたしが剣を受け取れなかったのを視るや、いな、や。

 お子さま英雄さん、慌てて、わたしには理解できない作業を開始し。知らない単語をぶーたれながら、一生懸命、頑張って作業を終えると。

 再度、わたしに、剣(ウッパニシャッドさん)を渡してきました。

 そして、受け取った瞬間――不確定要素にさせられてしまいました。

 

 知らない人から、物をもらってはいけません、よ!


 殺されかけたからです。



 お子さま英雄アートさんによると、不確定要素になってしまった状態で消滅すると、宇宙も消滅していた――そうです。

 緊急事態と判断し、超法的処置として。わたしの胸を揉んだ。理由、アートさんと出会って、一番、印象に残っている事象で。こちらの世界に引き戻し、固定するには、最高の条件だった、と、言ってました。

(胸を鷲掴みにされ、ファーストキスを奪われた乙女の恨み。忘れるわけ、ない!)



 そうそう。

 わたしが、魔王城に入れたのも。ニューロン・クローンが関係していました。魔王城に設置されている警備システムに精神波で介入し、一時的にシステム解除したんだそうです。そのとき、魔王城の旧システムが再起動したことにより、侵入者迎撃システムとして用意されていた。ミノタウロスが出現しまった、とか。

 ――自業自得だったんです、ね。


 なんとか、

 ししょうのマスター? に、なった、ら…………襲われました!

 

 ぎゃーーーーーやーーーーー!!!!!


 アートさんに、です。


 

 なんでも、精神の物質化? する補助システムである、金剛杵ヴァジュラ法具システムを使えるようにするため。実戦形式した、そうなんです。

 が、

 小芝居中に、ウパニシャッドさん(ししょう)の卑猥と事実を言ってしまったことアドリブにより、動揺し、実戦形式中止となりました。

 

 さすがに、わたしも怒りから。説明もなしに実戦形式は、酷くないですか? と尋ねたら。

「俺の教育方針は、褒めて伸ばすタイプやけど。じぶんは、褒めたら調子に乗って失敗するタイプやから、厳しい教育方針にした」、

 らしいです。


 はい――――あたり、です。調子乗って失敗して、いつも、怒られてます。




「ワート、お嬢さま」


 やんわりとした声。それだけで、艶のある女性だと、わかる。

(ふぅ、わぁ。…………こんな声の使用人さんって、居たっけ?)

 でも、つい最近、聞いたことのある声。


「起きないと、お尻、刺しますよ!」


 !?


(こんな物騒なセリフを言うのは、わたしが知っているなかでは、一人しか知りません。お母さま、ぐらいです。殺されルーぅー)

 

 ワートは、跳ね起き! 寝室をキョロ、キョロ、と見回しました。

 視界に入ってくる光景は、寝室。毛の長い厚めの絨毯に、机の上に山積みに置いている本。

(ちゃんと書斎に戻しておかないと、叱られるので、あとで片付けおくことにします)

 人の姿はなかった――その代わり。

 ふわ、ふわ、と浮遊している剣が、窓から入ってくる朝日を刀身で反射させる――眩しい光が。


「うにゃあぁぁぁぁーーーーー!!!!! め、がぁぁぁぁーーーーー!!!!!」

「はぁー。もう、変なが、アートに似てきてますね。マスター」

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