8.4 中学4年生
苦し紛れに返したスタンプが一瞬で日向さんの長文に押し出されて画面外に消えることを繰り返すこと2時間。ぶつっと長文の雨が止む。
「話聞いてくれてありがと。お休みー」
何事もなかったような一文を最後に残し、日向さんは去って行った。
ああ、俺の返事に既読がつかなくなったって意味な。多分そのままぱたっと本当に寝てしまったんだろう。
小月さんはとっくにいなくなっている。
ずるずるとスクロールしている途中に、小月さんの「戻ったみたい。後よろしくね。最後まで付き合って上げてね」の吹き出しが挟まっていた。
一応小月さんにメッセージを送ると返事が返ってくる。まだ起きてたんだ。
「終わったみたい。多分日向さん寝ちゃったと思う」
「お疲れ様。ごめんね、先帰っちゃって」
小月さんの声聞きたかったので通話に。
「こっちでいい?」
「もちろん」
わりとはっきりした声だった。日向さんの相手が終わるまで待っていてくれたのかもしれない。
「最後のほうは人形のこと関係なくなってたよ」
「そうなんだよね。わーってなって、んーってなって、最後力尽きてくれれば奈美ちゃんは大丈夫」
「大丈夫じゃないと?」
「次の日第二ラウンドかなぁ」
日向さんの相手は平気だけど、もやもやしたのが丸一日以上日向さんにたまったままになっちゃうってことだろう。それは可哀想だ。
「今日一日だけで日向さんの印象が大分変わった」
「どんなかんじ?」
「もうちょっとしっかりした人なのかと」
「それは分かる。奈美ちゃん綺麗だしね。よく知らないと他の部分も整ってると思うよね」
メンタルが豆腐……はちょっと言い方が悪いか。ディスる気はないんだ。繊細な人、みたいなんじか。
「小月さんもちょっと意外だった」
「私?」
「うん。日向さんが大人で、危なっかしい小月さんをちょっとからかいながら面倒見てるんだと思ってた」
「う。間違ってはいないけど」
「日向さんを助けてる部分もあるんだね」
「たまにね」
「小月さんしっかりしてるね」
「そ、そう? まあほら、私も高校生になって少しは変わった部分もあるから」
多分ちょっと調子に乗ってる小月さん可愛い。
「正直に言うと私ね、高校デビューなんだ」
おたわむれを。
小月さん可愛い。
中学4年生、というか下手すると小学10年生みたいな可愛さが魅力の小月さんがなに言い出すんだろう。
「どのへんが?」
「ほら、髪型とか」
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