7.8 よく見えなかったし
「ところがここにいるのだ!」
元気よく俺を指さす日向さん。
さすがにもう慌てない。小月さんももう慣れて……あれ?
「そ、そうなの、池辻くん!?」
いやいやいや。
顔真っ赤にして何言ってんの。
日向さんはからかってるだけだって。小月さんのほうが付き合い長いんだから分かるでしょ。
「……今はまだちょっとだめかも。ごめんね、池辻くん」
初めからそんな趣味ないから。
普通に小月さん独り占めしたいから。
やがて小月さんが元のサイズに戻る。
その後もいかに小月さんが大好きかを力説し、他の人にどうこうはやめてほしい、と懇願する俺。
小月さんはきらきらした目でそれを録音し、日向さんは横で楽しそうにスマホを構え続けた。なんだろう、この画。
「千穂用のドールハウス、頑張って仕上げるね。携帯用のは着けて帰ったらいいよ。改善してほしいところがあったら言ってね」
いろいろ遊ばれてしまったがこれについては素直に感謝。
「じゃあちょっとトイレ借りるね」
「なんで? ここで着けてみてよ。私もどんなかんじか知りたいし」
「またそうやってからかって」
「からかってないって。サイズは一応確認したつもりだけどさ、ちゃんと出来てるか自信ないんだよ」
日向さんがわりと真面目に聞いてくる。
「サイズ確認したんだ」
「うん、ちっちゃくなった時の千穂が入れば普段も入るんだよね?」
「まあそうだね」
「それ以外の時は千穂以上に大きくはならないよね? もっとちっちゃいんだよね?」
うん、その通りだよ。そうなんだけどさ。
これ以上ちっちゃい連呼されると泣いちゃう。
「私も確認しておきたいかも」
小月さんも気になるらしい。
「違うからね? やっぱり自分に関わることだからちゃんと見ておきたいってだけだからね?」
そもそも小月さんのためのアイテムだ。
実際に入ることになる本人に言われてしまうと断れない。
「しょうがない」
とりあえず中を見られないようにささっとトランクスの中に装着。
「ぴったりだ。日向さんすごい」
これだとちょっと小さいかなー、とか見栄を張りたいところだけど実際に丁度いいので文句が付けられない。
少し身体を動かしてみるが問題ない。多少ごわごわしているがすぐ慣れるだろう。緊急時に小月さんが多少でも楽になるならなんてことはない。
「よかった。千穂、あとは実際に入った時の感想、今度ちょうだいね」
「……」
「千穂?」
「ひゃいっ! あ、え、なに?」
「ごめん、邪魔したね。引き続き池辻くんの生着替えをお楽しみ下さい」
「た、楽しんでないからっ! よく見えなかったし!」
「はいはい」
すっかり遅くなってしまったが、ここで俺と小月さんは家路へ。
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