7.3 見ててあげるからこう、ぽろっとよろしく
でもこれはしょうがない。
よくできている。
俺も一緒に座り込んでしげしげ眺める。
ひとつひとつ丁寧に作ってあってすごい……んだけどこれはなんだろ。家の中にひしゃげたクリスマスツリーみたいなのがいくつか置いてある。サイズ的にはちっちゃくなった時の小月さんより少し大きいぐらい。アート?
「これは?」
「お父さん」
「……これ人なの?」
「隣がお母さんで、こっちがあかちゃん」
お母さんはまだいい。よくないけど。
あかちゃんとやらが特にひどい。説明しようがないけど、たこさんウインナーをひと夏放置して腐らせたら多分こんなかんじだ。
小月さんが人差し指をたてて、しーって牽制してくる。言っちゃだめだよ、って意味だな。でも言っちゃう。
「他はすごいのに人はなんでこんな、こう、アレなの?」
小月さんががしがし蹴ってくる。
オブラートに包んだつもりだったけどだめだったかな。
「そうなんだよね……。全然うまくできなくて。直線とか円とか、はっきりした形のは得意なんだけど」
自覚あったっぽい。
「だから君たちが必要なのだよ」
ん?
「サイズだけ合いそうな人形とか入れてもさー、なんか違うんだよね。やっぱり雰囲気が合わなくて。でさ、やっぱ本物みたいな女の子がここに入って、できれば動いて欲しいってのが夢なんだ」
だからね、と両手をくっつけて小月さんにお願いする日向さん。
「お願い千穂、ここに入って」
「……私はいいけど……どう? 池辻くん」
え。無理でしょ。クラスの女子2人の前で小月さん勃たせるとか。なあ? え、ご褒美? いやいやひとごとだと思って何言ってるの。むりむり。
「お願い池辻くん。見ててあげるからこう、ぽろっとよろしく」
日向さんがおかしい。
「あれ。だめ? 男の人って女の子に見られると興奮するんじゃないの?」
日向さんがめっちゃおかしい。
「人によるんじゃないかな」
「とりあえず試してみようよ」
「やだよ。小月さんだっているんだよ」
いや、小月さんじゃなくてもやだけど。
「千穂はもう見てるし。今更だよ」
「どういうこと!?」
「あ……ごめん、今の忘れて。なし。千穂は見てない。見てないよー」
「……どういうこと?」
再度詰問。
笑顔で。
「……ほら、昨日千穂撮った動画あったじゃん。最後ちょろっとだけちょこっとしたやつが映っちゃったやつ」
「ああ」
「千穂が動画早くくれっていうからさ。うっかりカットするの忘れたまま送っちゃったんだ。ごめんね?」
横で小月さんが耳を赤くして俯いている。
「……見た?」
小月さんがふるふると首を振る。
……いや、もう見たな、これ。そっかそっか。……そっかー。
「消してね?」
小月さんがふるふると首を振ったあと、慌ててこくこくと頷く。
……これ多分、消す気ないな。
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