第77話 雑談

僕はドキドキとして先輩の返事を待った。


でも、暫く待っても、

先輩からの返事は無かった。


「要く~ん!

早くおいでよ~

アルバム持ってきたよ~」


リビングの方から、

お父さんが呼んでいるので、

僕は、まだ来ないメッセージを確認し、

そのまま携帯を握り締め、

皆の居るリビングへと向かって行った。


「もう少ししたらお寿司来るからね~

要にはちゃんと卵や巻きずし頼んどいたからね!」


お母さんがそう言いながら、

麦茶の入ったコップを持ってきて来てくれた。


「でも今日は雨にならなくて良かったね。

要の体育祭、行くことが出来て本当に良かったよ」


お母さんがそう言うとお父さんも調子に乗って、


「でしょう? でしょう?

あ~ 要君に怒られた甲斐があったよ!」


と緊張感のかけらも無かったくせに、

何言ってるんだろうと僕は思った。


「いや~ 生徒会長の何って言ったっけ?」


のお父さんのセリフに僕はドキッとした。


「佐々木君でしょう?」


とお母さんが言ったので、


「そうそう、その佐々木君!

彼にも迷惑掛けちゃったね~」


と、こちらは本当に悪く思ってそうだった。


「そうそう、佐々木君も

お寿司に誘えばよかったよね?」


とお母さんが何故か

僕をチラッと見て言った。


僕は、何故お母さんがそう言う目をして

僕を見るのか分からなかったけど、


「ねえ、僕、

佐々木先輩に電話しても良い?」


とお母さんに聞いた。


「そうだね、来れるようだったら

誘ったら?」


そう言うお母さんの言葉を遮って、


「裕也は今日は忙しいみたいですよ!」


と矢野先輩が横槍を入れた。


「え? そうなんですか?

何か生徒会の用事でも?」


僕が尋ねると、


「あ……イヤ……

今夜は長瀬家と……」


先輩が気不味そうに言ったので、

僕はあ~だから返事が来ないんだ

と思った。


「長瀬って?」


とお父さんも、聞かなくても

良いような質問を!

と思っていると先輩も、


「佐々木の婚約者なんです」


と説明し始めたので、

僕は体が硬直してしまった。


「ほ~ 若い時から凄いね。

やっぱり政界に入るとなると、

若い時からレールは決められてるのかね~?」


とお父さんが言った。


「そうですね、長瀬家も旧家で、

政治家に嫁に出すって事は

願っても無い事なんでは無いでしょうかね~

それに裕也の家は総理大臣も生み出してきた家系ですし……」


「ほ~ これはまたまた

凄い家系だね~」


とお父さんが感心していた。


「まあ、それぞれの権力が入って

両家とも更にパワーアップですよね。

お互いそれは願っても無い事なんでは?」


と先輩が言うのを聞いて、

僕は少し悲しくなった。


「政治家だと言うと、αの世界だよね?

と言う事は彼はα社会に生まれ、

育ったんだよね」


「そうですね、僕もそうなんですが、

少し格が違いますね」


お父さんはう~んと唸って、


「長瀬家も旧家と言う事は、

αの世界だよね」


と尋ねた。


「そうですね、両家とも、

α以外の血を家系に持ち込まないことを

絶対としていますね」


と言う先輩のセリフを聞いて、

知ってはいたけど、

愕然としてしまった。


「と言う事は佐々木君って、

政略結婚?!」


お母さんが束さず聞いてきた。


「そうとも言いますよね。

少なくとも裕也の望みはそこには無いので……」


そう言って先輩が僕の方をチラッと見た。


「バカだよね~ 

今どき……

第3世界にだってαは居るのにさ。

自分たちだけが偉いとでも思ってるのかね?」


僕はお父さんのそのセリフを聞いた時に

何かがスコーンとはがれたような感覚に陥った。


そうだよね、

第3世界のみならず、

αってアマゾンの奥地にだっているよね?

文明の発達してない国にだって……

そう思っていると、


ブッブッブ~


と携帯のバイブレーションが鳴った。

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