この世界は、きっと輝いている

@ozakitatuya

第1話 世界崩壊の始まり

 この世界には、古くから伝わる2つの宝玉がある…。

 1つは、時の狭間から生み出された「時空石」。

 もう1つは、魔族が創り出した「魔空石」。



 その昔、世界ではこの2つの宝玉を巡り争いが起き、その争いは半世紀にも及んだ。

 そして長い争いは終わり、多くの犠牲者を出した。

 その結果、時空石は南の国、「アークセリア」へ。

 魔空石は北の国、「ユークニクス」へと渡った。


 アークセリアの王であるヴィダール王は、二度と争いが起きぬようにと、時空石を城の地下深くに封印した。

 やがて時は流れ、時空石の存在を薄れつつあったアークセリアは、日常を取り戻していた。


 一方、魔空石を手にするユークニクスの王、

 カルメス王は、魔空石の力で民を支配下に置いた。

 魔空石を手にする前は、優しく、国民の誰もが支持する王であったのだが、魔空石を手にしてから、

王はまるで別人のような性格になり、容姿まで別人となっていた。

 そしてカルメス王は、王に逆らう者、脱国を試みる者を反逆罪とみなし、次々と処刑していった。

 やがて国は滅び、ユークニクス国は消滅した……。




西暦 R523年 ラムダール国


「時空石と魔空石か……これは大発見かも!!」

 城の書庫で、時空石と魔空石に関係する書物を見つけ、それを懐へと収めた私は、

 城の兵士に見つからぬように部屋に戻った。

 私は城の生活に物狭さを感じて、いつか冒険に出るのが夢だった。

 それ故、王女になる為の勉強と言う口実で書庫に入っては他国に関する書物を手に取って読むという日々が続いていた。

 そして手にしたのが、「禁断の宝玉」という書物だった。


「さぁて、じっくり読むとしますか……」


 私が読みだそうとすると、コンコン、とノックする音が聞こえた。


「失礼致します、アニス様。」

「や、やばっ!!」


 私は慌てて書物を自分の部屋の引き出しに隠した。


「全く、人がゆっくり読もうとしてる時に………。

誰だ?」

「私です、ルシアにございます。」

「なんだ、ルシアか……入ってもいいぞ」

「失礼致します」


 ドアが開いて、髪の赤い少年ルシアが入ってきた。

 ルシアは私の幼馴染で、幼い頃からよく遊んだのだが、

 国のしきたりで、18歳を迎えた今は国の兵士として城に仕えている。


「アニス様、まだ外の世界に行こうだなんてお考えですか?」

「うるさい。あたしのやる事にいちいち口出ししないで。あと、2人の時はお堅い話し方はなしって何度言えば分かるの?」

「仕方ねーだろ、一応身分ってモンがあるからな。」


 そう言い放つと、ルシアは私の隣に座った。

 ルシアは私、アニス姫の素の姿をよく知る唯一の男だ。

 私は、城ではロングに金髪の髪を整えて、いかにも姫らしく振舞っているが、幼い頃はよく城を抜け出してはルシアと冒険ごっこをし、いつか一緒に外の世界へ行こうと約束したりしていたのだった。


「あんたこそどうなのよ?」

「どうなのよって、なんのことだよ?」

「だーかーら!あんたも外の世界に興味あるんでしょ?昔言ってたの忘れたとか?」


 私が聞くと、ルシアは「あー……」と言い、私の部屋の窓から空をながめながら、


「そりゃま、興味はあるけどさぁ」


 と言った。


「興味はあるんだぁ……じゃあさ、私に協力しなさい。」

「は?協力?何を?」


 全く、昔から鈍い所は変わってない。


「私がこの国をでて外の世界に行く協力に決まってんでしょ?今まで話してきたのに今更何を………」

「いや、待て待て待て!!」


 私が話終わる前に、ルシアは焦りながら私の前に立ち、


「お前、マジで言ってんのかよ!?オレがお前の脱国に協力!?」

「しーー!バカ!声が大きい!!……そうよ。あなた以外に誰を頼れって言うのよ?」

「で、でもな、オレがお前に協力したって知られたら……。」

「まぁ、間違いなく打首モノでしょうね。」

「打首って、お前オレはどうしろって言うんだよ!?」


 焦るルシアに私は呆れた表情をしてやった。

 全く、どこまでも鈍い奴。


「あんたも一緒に行くのよ。」

「……オレに断る権利は?」

「別に断ったっていいのよ?もし断るんだったらあなたは私の脱国を手助けした犯人として扱われ、外の世界を見ることもなく打首刑ね。」

「お前、ホント昔から変わってないよなぁ……。」

「変わったのはあなたの方じゃない。昔は『 お前といつか見た事のない外の世界で暮らすんだー』って大見得切ってたくせに。」

「それはガキだったからだ!はぁ……まぁ分かったよ。オレもいつまでも、かごの中の鳥はウンザリだからな」


 とまぁこんな感じでとりあえず仲間は確保できた。

 私は外の世界に行くにあたって、ルシアは連れていくと決めていた。

 国の外はモンスターがうじゃうじゃいるらしいが、私はまだ戦術が未熟だから、

  私が戦いに慣れるまではルシアに戦闘は任せるつもりだったのだ。

  それに、長い旅に1人だけというのも正直辛い。


「んで?いつここから出るつもりなんだ?」

「いつって、今からに決まってるじゃない。」

「は!?今からってどっから抜け出すんだよ?外は兵士が見張っててお前はすぐ見つかっちまうぞ?」


 私はチッチッチッと舌を鳴らすと

「それはもう解決済みなんだよねー」


 そういって 部屋のタンスを動かした。

「お前らしいというか、なんと言うか……。」

「へっへーん!気付かなかったでしょ?」


 そう、ここ1ヶ月前からタンスの裏の壁に穴を開け、脱出経路も練っていたのだ。

 私はすぐに旅に必要な道具、武器、地図、そして宝玉に関する書物を道具入れにいれた。


「さ、いくわよ!早くしないと見つかるわよ!」

「用意周到なのもお前らしい。」

「ぐだぐだ言ってないで着いてきなさい。」

「はいはい。」


 そこからは国の外までは簡単に抜け出せた。

 私は未だ見た事のない外の世界へ胸に期待を膨らませながらルシアと共に旅立つ。

 この時まだ、世界の崩壊の始まりとは知らずに……。


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