第2話
あの人が何をしているのか、家族がいるのかすら、私は知らない。
ただ、ここで夕日を見ていたとき、たまたま隣にいた。それだけの関係。
それでも、不思議な魅力を感じていた。この夕日と同じ。綺麗で、付け入る隙がひとつもない。完成されている。
自分が未完成だから、完成された何かに、憧れるのだろうか。
ライターを渡してから、あの人がここに現れることはなかった。
ここに来ないなら、探す。そして、あの人の煙草を点けさせてくれるような、人間になりたい。
完成されなくてもいい。あの人の隣に。
次にあの人の手がかりを見つけたのは、資料作成のアルバイトだった。
いくら頁を手繰っても、手首が頑丈なので疲れることがない。役所の資料は、ほとんど私の手によって綴じられていた。給金も良い。
当然、警察関連の資料も綴じる。信頼されているらしく、事件の資料も綴じていた。
そして、ひとつの事件で、それを、見つけた。
「私の」
ライター。
血で真っ赤に染まっていた。
どこかの抗争。
頭を撃ち抜かれた死体。
そして、ライター。
「どれが」
どれが、あの人なのか、分からなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます