Night Revolver
春嵐
第1話
夜の街。美しいネオン。緩やかな人並み。黒いスーツ。
この中に紛れて、人ではないものを狩る。
手持ちは、回転式拳銃がひとつだけ。スーツのベルトに雑に差してある。携帯端末。通信が来る。
『今日は、金を巻き上げてるやつが狙いだ。次の角を右。白い看板が見えたら通りの上を眺めろ』
「人なの?」
『人じゃねぇな。巻き上げられたショックで死んだやつもいる』
煙草を取り出して、くわえる。まだ、火は点けない。
「上、見てる」
『INTER nutsという単語を探せ』
「あった」
『そこにいるやつらは全員消せ。ひとりも残すな』
「お金の後始末は」
『全部つけてある。俺が餌になってるから、やつらは今そこに籠って俺から金を巻き上げる算段をしてるはずだ』
「わかった」
『通信は?』
「入れといて。喋りたくないからオンフックで」
『いいぜ。さぁ行け。仕事の時間だ』
英単語の並んだ建物。二階。扉を開ける。ひとり。肩口を撃つ。
『よぉ。お前ら、散々この街の人間から金をむしりやがったな』
ふたり。膝と股間を撃つ。
『この街は、人の面をした獣を許さない』
人の面をした獣。自分も、そうなんだろう。机の下から飛び出してきたのを、蹴飛ばして、撃つ。二発。
リロード。
『お前らの金は、この街の清掃資金にしてやるよ。安心して死ね』
呻き声。
「全員?」
四人転がっている。
『もうひとりいるな。電話役だ。いま通信入れてみる』
アラームが、鳴る。その方向に、撃った。飛沫の音。見なくても、分かる程度。
「終わったよ」
『これで全部だ』
「とどめは?」
『いらねぇ。金と同じ分だけ、血を失って死んでもらう』
扉を開けて、外に出る。煙草に、火を点けた。吸う前に、街のネオンに煙草を向ける。
「彼らに殺された、この街の者に」
『鎮魂を』
煙草を、吸う。
紫煙。街のネオンに、融けていく。
いつか自分も、こんな風に、街に殺されるのだろう。それまでの、人生。
夜の街。美しいネオン。緩やかな人並み。黒いスーツ。
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