幼馴染に誘われてジムに行ったら淫魔の餌場でした。〜実は彼女もサキュバスでした〜

ナナハシ

第1話 ジムの法則が淫れる


「絞りきるのよ♡ 最後の一滴まで出し尽くすの♡」


「うっ! うふほおおー!」


「頑張れ頑張れ♡ まだまだ行ける♡ まだまだ出せる♡」


「ぬおおおおー!?」


「いいぞいいぞー! ナイスファイトー! そのままもう一発♡」


「むぎゅがあああっーー!?」


「いいわ、素敵だわその顔! お姉さんたまんない! はぁはぁ♡」


「ん……んはぁ!♡ もうむり! みゅりいぃぃー!♡」


「無理だと思ってからが勝負よ! 死ぬ気で絞り出しなさーい♡」


「い、いやああああ! もういやあああー! もげるぅー!」


「ダメダメ♡ お姉さんも手伝ってあげるから頑張って! いっち……にい……」


「ウッギャアアアアー!?」


「ほらほら、まだ出る! まだ出せるわよー♡」


「あうっ!? うぐぅん! はぁん!♡」


「らすとぉー♡」


 飛び散る汗。


 はち切れる筋肉。


 体の線がくっきり出る、加圧シャツとレギンスに身を包んだ美女と美少女に囲まれて、俺は地獄のバーベルスクワットを終えた。


 バーベルをラックに降ろすと同時に崩れ落ちる。


「はぁ……! はぁ……!」


 足の感覚がない……息が苦しい……心臓が口から飛び出そう!


 なんでこんなに頑張っているんだ俺は!


「すっごーい! こんなにパンパンだよ!」


「こっちもー!」


「あっ! ちょっと……やめ!」


 幼い女の子らが、パンパンにパンプした俺の足をモミモミしてくる。


「明日は筋肉痛まちがいなしだね!」


「ねーっ!」


「頼むからモミモミしないでー!?」


 完全にイッっちまった太ももがビクビクとひきつる!


 やめてえええー! つっちゃうからぁあああ!?


「うふふふ、よく頑張りましたねー。ご褒美に……」


 と言って、俺のアミノ酸入りのスポーツドリンクを渡してくるお姉さん。


「少し休んでから、もう1セットよ♡」


「!?」


「若いんだから、もう一回くらい……イ・ケ・る・で・しょ?♡」


「いやああああー!?」


 俺……北江春木(きたえ・はるき)17歳、高校2年生。


 わけあって美女に取り囲まれ、来る日も来る日も地獄の筋トレです……!



 * * *



 さかのぼること、2週間前――。


「よっ! 相変わらず冴えない顔してんなっ、ハルキ!」


 学校が終わって帰り支度をしている俺の前に、家が隣同士で幼馴染である夢間遊子(ゆめま・ゆうこ)が、ひょっこりと姿を現した。


 小柄で幼い顔立ちではあるが、出るとこは出て、締まるところは締った、いわゆるそそる体つきだ。


 肌は子供みたいに日焼けているが、その表情にはうっすらと赤みが差し、やたらと色っぽい。


 常に恋をしているかのような潤んだ瞳にあてられ、一発ノックダウンさせてしまう男子が続出中である。


 まさに夢魔のごとき幼馴染。

 今日もこいつの下駄箱は、発情した男どもの手紙で大変なことになっているんだろうな……。


 こんな、やたらとセクシーな幼馴染がいることを羨ましがられる身にもなって欲しいのだが、さてはて今日は一体、なんの用なのか。


「突然だけどさ、あたしと一緒にジム通わない?」


「えっ!?」


――ガタァ!

――ザワザワ……!


 たったその一言で教室内がざわめき、男子達の視線が俺に突き刺さった。


 や、やめてくれよ! お前の口から出ると『ジム』という単語ですら淫靡に響く……。


 ただでさえ、お前みたいなエロい美少女と幼馴染であることをやっかまれて、毎日のように嫌がらせを受けているのに。


 今日だって、机の中にカビパン入れられてたんだぞ!?


「本当に突然だな……どうして俺なんだよ」


「幼馴染の将来を心配して誘ってあげているんじゃない。あんた、そんな貧弱な体じゃ一生ドーテーだよっ?」


――ザワザワ!

――ガタガタ!


「こ、声が大きい!」


 頼むから、教室の中でドーテーとか言わないでくれ!


 ここには多感な年頃の男がいっぱいなんだから!


 特にお前が言うと……ほら! 何人か体が『くの字』になってるじゃないか!


 ああ、女子まで俺の方見てきた……。


――ヤッバーイ、くっつくの?

――ついにあの2人くっつくの?

――ジムで?

――やらしー。


 そんなヒソヒソ話になってないヒソヒソ話が聞こえてくるー!


「どうしたの? ねえ、どうしたの? ハルキ」


「あわわわ……」


 あ! 最近お前に告ったあの男子!


 すっごい顔で俺の方睨んでいるから!


 ぜってー明日、イジメられるからー!


 頼むからこれ以上、俺の学校生活の平穏を淫さないでくれ!


「なになにー? そんなにドーテーって言われたのが悔しかったの? プークスクス」


「お、お前、わざと言っているだろ! わかってからかってるだろ!?」


「えー? なんのことかユーコさっぱりわかんない! それでどうすんの? 私の一緒にジム行くの? ねえ行くよね? こんなに可愛い幼馴染の親切を無下にしたりしないよね? ねっねっ? イクよねー!?」


――ザワザワザワ!


「わ、わわっわー! わかったから! 付き合うからとりあえず教室出ようか……」


「うん、2人で『いっぱい♡』鍛えて、モテモテになろうね!」


「わわわ、わかったからちょっと黙れ……。あと、『いっぱい』のところを変に強調するな……」


 俺は、遊子の小さな手をひっつかむと、針のむしろのような教室を抜け出した。


 まさかこれが地獄の日々の始まりであるとは、露も知らずに――。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ちょっとラブコメ書いてみました。


初めてなんで上手く書けてるかどうか……(汗)


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