第2話 幼馴染の服装が淫れる


 そして遊子とともに来たのは……。


「市営体育館じゃねーか」


「そーだよー! 街中のジムはお金かかるからねー」


 ここ、体育行事で何度か来たことあるぞ。

 年中やっているプールもあるし、そういやジム(トレーニングルーム?)もあったけ。


 入ってすぐのところにある券売機で、利用券を買う。

 高校生は150円だ。


「やっすー」


「税金は、こういうところで取り戻さないとねっ」


「う、うん……」


 妙に世知辛いことを言う幼馴染である。


 まずはロッカールームで着替える。

 突然言われたから、体育で使うジャージしか持ってないけどな。


 遊子もきっと、似たような格好だろう……と思いながら、ジムの前に置いてある体組織計で、体重などを測る。


 身長168センチ、体重62キロ、体脂肪率21%……。


 BMIは標準であるものの、ちょいポチャに見えてしまう俺である。


 下腹の肉も軽くつまめるしな……。


 マンガやゲームが好きで、コーラにポテチが最高のご馳走だと考えている10代の男子としては、それでもわりと健闘している方じゃないか?


「おーまたせっ♡」


「おう、随分かかったな……って、うおっ!」


「えへへへー、どうよ?」


「ど、どどど、どうよってお前……」


 俺は一瞬で顔が真っ赤になってしまった。


 遊子が着ていたのは、下半身のラインがくっきり丸出しの花柄スパッツと、なんかもう下着にしか見えない、黒とピンクのスポーツブラだった。


 当然、おへそも丸出しである。


「……すげえな」


 昔から無自覚に色気を振りまく奴だったが、俺はあらためて呆れた。


「えー? それだけー? せっかく新しいの買ったのに……」


 口をとがらせて、つまらなそうに言う遊子。


 褒めたほうが良かったのだろうか?


 しかし、褒めたら褒めたで、どんどん調子に乗っていきそうで怖い。


 というか……。


「おまえ、わざわざジムで鍛える必要ある?」


「ええー? それどういう意味よー?」


「いやだって、普通にスタイルいいじゃないか……それ以上鍛えてどうするんだ」


 きちんと出るとこは出て、締まるところは締まる。


 世の多くの女性達が泣いて悔しがりそうなナイスバディだ。


 はっきり言って、高校生ばなれしている。


「それってさ? 遠回しに褒めてるー?」


「え、いや……そんなんじゃ」


「褒めてるよね? っていうかぶっちゃけ、私のバディに釘付けなんだねー!? クスクスー、だったら素直にそう言えばいいのにー」


「ふががっ!? そ、そんな眼では見ていないぞ!」


「そんな眼ってどんな眼よー! このこのー! ハルキも男の子だなー!」


 と言って、俺の肩をバシバシ叩いてくる遊子。


 ええい、いちいちおちょくるな!


「それじゃ、早く受付すませちゃおっか。時間が経つと社会人さんが来ちゃうし」


「お、おう……」


 初めての利用なので、学生証なんかをみせて利用者登録をする必要がある。


 俺は遊子に続いて、入ってすぐの受付に向かう。


 放課後まもない時間とあって、ジムの中は空いていた。



 * * *



「いらっしゃいませー。あらぁ、ユーコちゃんじゃないー」


「こんにちわ! マミさん!」


 受付には、紫色のジャージを着たお姉さんがいた。


 どうやら遊子とは知り合いのようだ。


「紹介するわね、私の従姉妹のマミ姉さんよ。最近ここで働き始めたの」


「春木です、よろしくです……」


「あらあら、ユーコちゃんのお隣さんね? 話には聞いているわ!」


「えっ、そうなんですか?」


 内心ドキッとする。


 遊子のやつ、なんか変なこと言ってないだろうな。


 ちょくちょく窓伝いに侵入してくるので、俺のプライベートは無きに等しいのだ。


「ついに連れてきちゃったのねっ♡」


「へへへー、連れてきちゃいましたぁー♡」


 2人とも妙に楽しそうにはしゃいでるので、俺はますますドキリとしてしまう。


 遊子にはそう……色々としてやられているのだ。


「……げふんっ」


 改めてマミさんに目を向ける。


 身長は俺と同じくらいだけど、スタイルは抜群だ。


 長い栗色の髪をざっくりと1つに束ねていて、ほのかにシャンプーの匂いのする正統派お姉さんである。


 遊子の親戚ということで、それとなく雰囲気も似ているな。


 瞳が潤んでいて血色が良く、人の本心を見透かすような視線で見つめてくるのだ。


「おや、新入りかい?」


 そこに、近くのマシンでトレーニング中だったお姉さんが加わってきた。


 髪が金色で、顔立ちがどこなくハーフっぽい人だ。


 そして……。


――ボボイーンッ!


 とんでもなく胸が大きい!


「これはまた、ウブいのがきたねー」


「うふふ、シゴキがいがありそうでしょ?」


「えっ!?」


 そのお姉さんは、俺のみすぼらしいバディを舐め回すように見てきた。


 なんか恥ずかしいぜ……。


 そして、否応なく胸の鼓動が高まっていく。


 だってそのお姉さん、遊子に負けず劣らずの、パツンパツンな服装をしているんだもの。


 黒地に白の格子模様の入ったヨガパンツに、やっぱり下着にしかみえない白のスポーツブラだ。


 その全てに汗が滲んでいて、さらに体のラインが浮き立ってしまっている。


「あ、あの……」


 い、いかん。


 あんまりジロジロ見ては失礼だ。


 俺は真面目に体を鍛えるためにここにきたんだぞ。


 きちんと、そういうお話をしよう……。


「俺、ジムトレは初めてなんです。わからないことだらけなんですけど、どうぞよろしくです……!」


「うん! それは見ればわかるよー? いやー、楽しみだなー。そういう人こそ絞りがい……じゃなかった鍛えがいがあるからねー」


「えっ?」


「ううん、何でもないよ! 私はナオミっていうんだ! いつも今頃の時間にいるから、何でも気軽に聞いてよねっ!」


「あ、はい! よろしくです!」


 ナオミさんはそう言って、からっとした笑顔を浮かべた。


 そして、それがジムトレーニーの挨拶なのか、力こぶをグッと作って見せてきた。


「おおっ……すごい!」


 俺は思わず声を上げてしまう。


 女の人でも、こんなに鍛えられるんだな!


 腹筋も割れてるし……!


「あははっ、私の手にかかれば、ハルキ君……だっけ? きみもすぐにムキムキになれるよ! ああ、待ち遠しいな……その後は」


「わ、わー!」


「なな、ナオミさん! そろそろ受付シートを書いてもらわないといけないんだけど……!」


「お、おっと危ない……」


 むむむ?


 俺はその時、不審なものを感じずにはいられなかった。


 ナオミさんが何か言いかけたことを、遊子とマミさんが必死になって誤魔化しているような……。


「さっ、2人とも、この紙に名前と住所を書いて頂戴……」


「は、はーい!」


「わかりました……」


 漠然とした不安を感じつつも、言われた通り紙に記入していく。


 利用者登録はいとも簡単に終了し、その場でメンバーカードも発行される。


「よしっ! じゃあ早速鍛えよー!」


「お、おー!」


 いろんな器具があって、何から手をつけて良いかもわからないけどなー。


 こうして、俺と遊子のジムトレ生活が始まった。

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