第8話 暗闇の中で

 夜、きっかけはわからないが『そうだ』と閃いた。 


 自分が『正義の味方』になればいいじゃないかと。


 そして毛布を被り、膝を抱えて横になりながらもそう決意した。


 ピッタリと締め切った襖の向こうから聞こえるのは雑音、嬌声、悲鳴?


 勇気を振り絞り一度止めに行ったことがあるが、ダメだった。


 どうやら自分の出る幕ではなかったらしい、両方から酷い目に遭わされた。


 だから今はそれが終わるまで、台風が過ぎるのを家の中で待つように、自分の部屋で誰の邪魔にもならないように明かりを消して毛布にくるまるのだ。


 彼女の幸せは彼女が決めるのだ、それに自分が口を挟むべきではない。


 でも、相手は? 相手の幸せは本当に彼女と一致しているのだろうか。


 わからないし、そうだと口にされても信用する気にならない。


 ――ふわりとタバコの臭いが漂ってきた。


 もしかすると襖の隙間から入ってくるのかもしれない。


 鼻で呼吸するのを止めた。


 その根源に受け入れがたい何かを感じて。


 そして同時に心に決める。


 自分が『正義の味方』になろう。


 そしてもし彼女の幸せを奪わんとする者がいたならば、そんな存在からきっと自分が守ってやるのだ。


 だって…………そうするべきでしょう?


 暗闇の中、耳を塞いで、目を閉じて、自分の正義をただ信じた。

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