前世が勇者(♀)な小5男子が前世が魔王(♂)の美少女転校生に恋するわけありません!!
浅見朝志
プロローグ
第1話 出会って1秒でわかりました
それはたった1歩のことだった。時間にしてほんの1秒。
艶やかな綺麗な黒髪を二つ結びにした少女が教室に足を踏み入れたその1秒で、中条
そうだ、俺はアリルメトローズン王国反攻軍を率いた勇者――レイシア・クルヴァートリーという名前の剣士だったはず。
そして性別は名前からわかる通り、俺は女だった。
「それじゃあ、クラスのみんなに自己紹介をしましょうか」
5年1組の担任の洋子先生が教室の壇上に上がったその転校生の少女にそう促した。
少女はそれに頷くと、手に取った白のチョークでカッカッカッと音を立てて黒板に自分の名前を書いて、それからこちらを振りむく。
少女はクラスメイトたちを見渡して、それから一瞬だけ勇士へと視線を向ける。
そして勇士の姿を認めると、何事もなかったかのように顔を逸らす。
それから少女は朗らかな笑みを浮かべると、クラスの正面、奥の方へと顔を向けて1つ息を吸い込んだ。
「今日転校してきました、佐藤
子供らしい少し緊張を帯びたようなその挨拶。
ペコリと頭を下げる麻央に対してクラスは「よろしくお願いしまーす!」といった和やかで好意的な返事で満たされる。
そんな中で1人、勇士だけは頭を抱えていた。
いったいどうしてこうなったのだ?
いったいなんでアイツがここに?
突如としてアリルメトローズン王国に宣戦を布告し、多数の魔族を率いて侵略を開始した魔王――グローツェス・ベリト・サタン。
何年も続いた戦争の終端、崩れた魔王城の最上部で繰り広げられた一騎打ちで
いったいどうして同じ世界線の同じ国の同じ小学校の同じクラスに。
――それも美少女に生まれ変わっているんだよっ!?
今まで中条勇士という男子として生きてきた11年の歳月よりも、よっぽど濃密なその数分間で勇士は理解した。
あの時の勇者(♀)が勇士で魔王(♂)が麻央で。
とてつもなくややこしいことになってしまったのだと、出会って1秒でわかってしまったのだ。
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