「愛してる」って言いたかった。
玉井冨治
第1話 「拝啓 愛する君へ」
朝、目が覚めて起き上がる。
君の寝顔を見てちょっとほころぶ。
カーテンを開けて君と僕、二人分のコーヒーを淹れトーストも二枚焼く。
焼いたトーストにバターを塗って、その上に半熟の目玉焼きを乗せる。
朝ごはんの準備が出来たらまだ寝ている君を優しく起こす。
これが僕らの朝のルーティーン。
家を出て、最寄りの駅まで君と手をつないで向かう。
僕らはどこでもいつでもラブラブだ。
駅に着くと、まだ名残惜しい僕の右手と君の左手を放してそれぞれの職場へ行く。
君は空いている下り電車。
行先は大宮。
僕は通勤ラッシュで混んでいる上りの電車。
僕の職場は東京。
職場で僕は人気作家から芸能人の取材カードの校閲をする。
たまに面白い言葉の間違いを見つけて「どんな人でも、ただの人間なんだ」と思って安心する。
お昼はいつも彼女が作ってくれた愛妻弁当。
君は僕には勿体無い位可愛いのに、ただ可愛いだけじゃなくて仕事も勉強も料理もできる。
運動はできないけど、そこがまた可愛い。
君は残業をしてこないで、時間内に全ての仕事を終わらせてから帰っていく。
僕はよく残業をしてから帰るから、君の方が家に帰るのが早い。
だって、君は定時に帰るから。
君の作ってくれた夕飯と僕の大好きな君の笑顔が待っている家に帰る途中、僕はいつもコンビニで君の好きなカスタードプリンを買って帰るのだ。
ついでに僕の缶酎ハイも。
アルコール度数は八パーセントで五百ミリリットルのやつだ。
家に帰ると笑顔の君がいて、君が作ってくれた美味しい夕飯もある。
夕飯を食べて二人でお風呂に入るのも決まり事だ。
風呂から出ると僕は缶酎ハイを飲んで、お酒が苦手な君はカスタードプリンをちょっとずつ食べる。
そして、抱きしめ合って眠る。
そう僕達の日常はこんな感じだった。
こんなにも暖かった。
この日常さえあれば、何もいらなとさえ今でも思う。
僕は君のことを愛している。
君がどんな体になろうとも、君がどんなに傷付こうとも僕が君の事を愛しているという事実は、その事実だけは変わらない。
僕は君を愛している。
愛している。
愛している?
それだけではない。
「愛している」だけでは足りない。
でも、「愛している」以上の言葉がない以上それにしかならない。
ただ僕は君の事を「愛している」以上に愛している。
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