死神少女〜寿命と引き換えに、あなたの願いを何でも叶えます
まっきーに
第一章 【死神少女】:第1話
俺の名前は金井 ジュン。
日雇い仕事で日々を繋ぐ、25歳のしがないフリーターだ。
頭は良くないし、これと言った特技もない。色々事情もあって、学校だってロクに通ってこなかった。
人生に多くは望んじゃいない。
健康で生きていられればそれでいい。
正社員になりたいと思うことは無いわけじゃないが、それも大して望んでいない。
そんな俺が、ある日いつものように仕事を終えて、アパートに帰ると――
「あ、どもー」
なぜか、知らない女がくつろいでいた。
「……は?」
ちょっと待て、どういうことだ。
ここ、俺の部屋……、だよな?
肩までの長さの黒髪に、真っ黒な瞳、そして黒一色のワンピース。
全身を漆黒コーデで身を固めた見た目15歳ぐらいの少女に、俺は全く見覚えがない。
にもかかわらず、彼女はまるで自分の部屋にいるかのような態度でそこに座っている。
一瞬、俺が部屋を間違えたのかと思った。
だが、家具の配置、部屋の匂い、どこをどう見てもここは自分の部屋だし、そもそも俺はこの部屋に入る際に鍵を回している。
もしここが他人の部屋であれば、その鍵がすんなり回る道理はない。
となれば、やはり彼女がここにいるのはおかしい。
いるのもおかしいし、俺が買ってきたポテチを勝手に食べてるのもおかしいし、その油まみれの手でテレビのリモコンをぽちぽちしてるのはもっとおかしい。
おいてめえ、一体どういう教育受けてきやがった。
「えっと……、どちらさま?」
「あー、良く言われます」
「良く言われるんだ……」
「はい。急に現れるのが私のモットーなので」
「そのモットーは実際忠実に遂行されてるけど……、え、マジで誰」
「ふふふ、誰だと思います?」
「……警察、呼んでいいかな?」
「呼ぶなら呼んでもいいですよー」
いや、怖ええよ。何で知らない人の家で寛ぎながらそんなに余裕なんだ、この子。
ダメだ。どう考えても、まともじゃない。
俺の部屋に不法侵入してる目的はさっぱりわからないが、これ以上関わりたくないし、ここはさっさと警察を呼んでお引き取り願おう……。
♢♢♢
「……は?」
「だから、誰も居ないじゃないですか。お兄さん、ちょっと大丈夫?」
警察に通報をかけてから三十分後。
やってきた警察官が俺の部屋をぐるっと一周を見渡した後、呆れたように口にした言葉は「誰もいませんけど?」という、俺の正気を疑うような言葉だった。
「いや、誰もいないって、どう見てもそこに……」
「そこにってどこにですか?」
明らかに目の前にやばそうな女が居るのに。
そしてその女はこちらを見て、ニヤニヤと怪しげに笑みをこぼしているのに。
警察はまるで俺しか見えていないように、そう続ける。
「とにかく、僕はこれでもう帰りますけど」
「あ、ちょっと……!」
「ま、本当に不審人物がまた現れたならご連絡ください。それでは」
扉を閉めて去っていく警察。
後に残されたのは、俺と――
「だから呼んでもいいって言ったじゃないですかー」
相変わらず一切動じるそぶりを見せない彼女の、2人。
「……どういうこと?」
今目の前で起こっていることが全く理解できない。
俺は夢でも見ているのか……?いや、夢にしてはあまりにも現実感が強すぎて――
「私ね、あなたにしか姿が見えないんです」
「え?」
ニヤリと笑みを浮かべる少女。
いつの間にかその右手には、彼女の体型には不釣り合いなほどの巨大な鎌が握られている。
そして、その背中には――
「いわゆる、死神ってやつです。私」
黒い翼が2枚、生えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます