歩く空き缶

@gokoutouki

第1話

歩く空き缶


ある日突然世界中の空き缶に足が生えた


「教授!大変です!あ、空き缶が、町じゅ、じゅ、中の空き缶に足が!」

「ウム、わかっておる。とりあえず落ち着きたまえ助手」

「はぁ、はぁ、は、はい」

私は研究室にある椅子に座りなおして

教授の目の前のひっくり返された水槽に目が入った、先ほどまで街中で見かけた足の生えた空き缶がその水槽の中に入っていた。

「教授"それ"はなんなんですか?」

「とりあえず、見かけたところを捕まえてみたんだが、ワシにもよく分からん。いったいなんなんだろうなこれは」

空き缶は水槽のガラスが見えてないかのようにガラスにぶつかり続けながらまっすぐ歩き続けている。

「何かの生物かなんかですかね」

「うーむ、体温はなさそうなんだよなぁ」

「じゃあ、機械かなんかで動いてるとか!ラジコンとかで!」

「なんのために作ったんだ?勝手にゴミ箱に入るわけでもなかろうに」

「確かに…」

研究室に沈黙が訪れる

しびれを切らしたかのように教授は。

「まぁ、害はなさそうだし、ほっといても大丈夫だろう。それより今は掃除だ、この空き缶を捕まえるのに水槽をひっくり返したからな、研究室がめちゃくちゃだ」

教授の足元にはぴちゃぴちゃと金魚が跳ねているのに私はようやく気づいた。

「確かにそうですね、とりあえず片付けますか」

「ウム、助手はバケツか何かを持ってきてくれ、この水槽の奴を別のに入れとかなければいけないからな」

「そうですね」

…………………

ある日世界に歩く空き缶が現れてから、私たちの世界は特に何も変わることはなかった、結局なぜ空き缶が歩き出したのかも分からないし、面白がって空き缶を飼いだす人もちらほら出てきた。

空き缶が歩き出したように、なにかが突然変わることもあるのかもしれない、なにが動き出しても、もう動揺することは無いと思うが世の中なにが起こるのかは予測できないもんだよなぁ。

そう思いながら研究室に向かう途中、いつも見ている町の建物が少し動いてるような気がした。

たぶん気のせいだろう。


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