6 自己紹介 上
ユイと呼ばれていた赤髪の少女に連れられてやって来たのは、小ぢんまりとした喫茶店だった。
此処で話をするのかな?
……普通に中にお客さん居るみたいだけど。
「えーっと、あまり他の人に聞かれたくないような話なんじゃないの?」
「だから場所を移したんですよね?」
私とクロードはそういう指摘をするけど、ユイは大丈夫というように笑みを浮かべて言う。
「大丈夫。此処私の実家だから。あ、お父さんただいま。ちょっと込み入った話あるからこの人達家に上げるねー」
「そういう事なんで、お邪魔します」
ライアンって呼ばれていたスーツの人もカウンターに居たマスターに軽く会釈してそう告げ、二人は奥の方へと入っていく。
「俺達も行きますか」
「そ、そうだね……あ、お邪魔します」
「お邪魔します」
私達もマスターに会釈しながらバックヤードへと入り、案内されるまま階段を上る。
そうして案内されたのは、なんの変哲もない一般住宅のリビングだ。
「まあ適当に座ってて。ちょっと私、お父さんにコーヒー淹れて貰ってくるから。あ、お金は別にいいよ!」
「あ、ちょ……」
お構いなくって言おうとしたけど、そのままユイは部屋を出て行ってしまい、部屋の中には私達と、ライアンさんが残される。
……正直今この瞬間にも色々聞きたいことはあるんだけど、多分話の主導権を握ると思うユイが席を外している間は中々誰も話し出す事が出来なかった。
だから私とクロードはひとまずソファーに腰を沈め、ライアンさんは壁に背を預け、ユイを待つことにした。
そしてしばらく会話も無く待っていた所で。
「お待たせ!」
コーヒーを淹れたユイが部屋へと戻ってきた。
そして私達の前にコーヒーとスティックシュガーが用意される。
とりあえずそれはありがたかった。
……ブラックは頑張らないと飲めないしね。
……まあそれは良いとして。
そういった準備を終えたユイが私達の対面に座る。
「いや、ありがとね来てくれて。さっきも言ったけどさ、自己紹介すら公衆の面前ではできない訳だからさ」
「どうやらこの国では誰が聖女をやってるかは公にはされていないようですね」
「そ、お兄さんの言う通り公にはしていない……って話をしてくるって事は、私が聖女やってるってどうやら無茶苦茶バレてるみたいだよライアン」
「マジか」
……逆にバレていないとでも思っていたのだろうか?
……まあとにかくこれで確定。
目の前の少女はこの国の聖女だ。
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