10 追憶 Ⅰ《クロード視点》
聖女は国を守る人柱だ。
自分達はその犠牲の上で生きている事を忘れてはならない。
長年聖女の執事を勤めていた父はクロードに対しよくそう言い聞かせていた。
聖結界を張り続ける事により生じる体への負担。
それにより当然のように短命。
確かにそうした害を一身に受けて国家を守る聖女らは父の言う通り人柱のようなものだと思ったし、そんな聖女達に敬意を表するのは当然の事だと、子供ながらに考えていた。
だからこそ、この国のあり方にずっと違和感を感じて生きてきた。
皆、聖女に守られるという事を、さも当然の権利のように生きている。
人の犠牲の上で立っているという自覚があまりにもない。
言ってしまえば無関心。
そんな、どこか不快な違和感。
そんな不快な違和感を感じながら、クロードは18歳になった。
この日から勤める事になったのは父の変わり。
その準備。
前の聖女がもう持たないというので、新しい聖女が用意された。
父は病気を患っており、聖女が入れ替わるのと同時にその執務はその後釜として教育を受けてきた自分へと引き継がれる事になり、今日はその新しい聖女との顔合わせ。
(……俺が支える)
そう強く心に決め、彼はその顔合わせへと望むことにした。
誰も聖女に対して無関心で、内情に詳しい城の人間や同僚も一般人と比較すればマシに思える程度の認識でしかない。
父と……早くに病気で亡くなった母以外に、聖女という存在を重く捉えている国民など見た事が無かった。
だからその分……これから一番近い位置に立つであろう自分が支えなければならない。
せめて自分位は無関心でいてはいけない。
……そして。
「私はクレア・リンクス。これからよろしくお願いします、執事さん」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
クレア・リンクスという、これから聖女となる少女に出会った。
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